ネット誹謗中傷で自殺図った高校生「発信者に罰も必要では」

2020年5月28日 07時14分

自分を中傷したネット掲示板のコピーを見つめる生徒 =埼玉県川口市で


 フジテレビの恋愛リアリティー番組「テラスハウス」に出演していた女子プロレスラーの木村花さん(22)が会員制交流サイト(SNS)上で非難された後、遺書のようなメモを残して亡くなったことを受け、インターネット上での誹謗(ひぼう)中傷が改めて問題視されている。中学時代にいじめに絡んだ書き込みをされた高校男子生徒(17)が本紙の取材に応じ、「前から問題になっているのに対策が打たれていない。政治家などは真剣にとらえてほしい」と訴えた。 (森雅貴)
 「一生いじめられっ子」「虚言癖がある」「死ね」−。生徒は二〇一五年に埼玉県川口市の市立中学校に入学後、サッカー部内で仲間外れや暴言、暴力を受け、二年生の秋には自殺未遂を図った。頑張って登校しても、ある時からクラスで口をきいてもらえず、知らない生徒から指をさされるように。友達からネット掲示板の存在を知らされ、ショックを受けた。
 学校名入りで生徒のいじめが話題(スレッド)に設定され、生徒や母親の実名などをさらして中傷する匿名の書き込みがされていた。「自転車に乗っていた」など行動を監視するような記述もあり、外出が怖くなった。「書き込んだ人の顔も名前も分からず、窓から飛び降りようと考えたこともあった」と振り返る。
 書き込みは約三千件に上り、生徒の母親は一八年一月に弁護士に相談。元生徒の実名やあだ名をさらした四件の書き込みに絞り、発信者の名前と住所、メールアドレスの開示をプロバイダー(ネット接続業者)三社に求める訴訟を起こした。十二月に東京地裁が開示を命じ、三人の投稿者の名前や住所が判明、一人と和解した。二人を提訴し、一九年九月までに和解が成立した。三十万円を支払うことで最後に和解した投稿者は同級生の父親だった。
 生徒の代理人を務めた荒生(あらお)祐樹弁護士は「裁判での解決には数カ月から一年以上かかる場合もあり、数十万円の費用もかかる。現状では声を上げられない被害者が多く、悪質な書き込みは続く」と困難さを説明。「発信者特定にかかる期間を短くする法整備や、安易な書き込みをすると訴えられる可能性があることを学校で教えることなどネットリテラシーを高めていくことが大切だ」と指摘する。
 総務省は四月に有識者会議を設置し、表現の自由やプライバシー保護と両立させながら、裁判を起こさなくても情報開示ができる仕組みや、投稿者特定のために開示する情報に電話番号を加えることなどを検討している。七月ごろに方向性を示したいとしている。
 同省によると、ネット上の不適切な書き込みなどに関する相談は、一〇年度は千三百三十七件だったのが、一九年度は五千百九十八件と大幅に増えている。生徒は「匿名だからと何でも書き込むのを防ぐために、処罰を与えることも必要では」と話している。

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