のびのび文化の魅力 国立高校80周年 同窓会が記念本出版

2020年5月28日 07時16分

「国高物語」を手に「卒業生以外にも読んでもらえれば」と話す柴沼君暁さん=三鷹市で

 創立八十周年を迎えた都立国立高校(国立市)の同窓会が、記念事業として書籍「国高(くにこう)物語 ユニーク人材を生むのびのび文化の底力」を自費出版した。日本一の文化祭との呼び声もある「国高祭」のルポや、著名な卒業生らのインタビュー、対談を通じ、魅力を浮かび上がらせたいとの思いが詰まった一冊だ。

国立高校の校舎=国立市で

 「やったから絶対にできる、なんてことはありえないし、理想が高ければ高いほどできないことの方が多いのです。しかし、やらなければ、それこそ絶対にできないのです」
 書籍で、こう語っているのはキヤノンのデバイス開発本部長の市川武史さん。一九八〇年夏の高校野球で、都立として初めて甲子園に出場した時のエースといえば、中高年なら思い出す人も多いはず。猛練習を積み、変化球を工夫し、試合で平常心を心掛けた栄冠への道のりを振り返り、努力を重ねる大切さを説いている。
 生徒の自主性を尊重する国高の校風は「のびのび」。都立では日比谷、西とともにトップ校と称され、難関大への進学率は高いが、学校行事にも心血を注ぐ。その最たるものが九月の国高祭。受験勉強はこれが終わってからという生徒も少なくない。

高校の敷地内にある甲子園出場記念碑

 運営は生徒が主体。目玉は三年の全クラスが教室で上演する演劇で、脚本家に上演許可を得る交渉から、監督、内装、宣伝まですべて担当する。演劇を含む出し物のレベルが高く、毎年多くの来客がある。書籍では「のびのび国高文化を育むもの」の章で、演劇のプロではない生徒たちが学び、成長し、つくり上げる様子をルポライターの杉山春さんが取材、執筆している。
 卒業生の顔ぶれも多彩。二十三人のインタビュー、対談には作家の志茂田景樹さん、俳優の六平(むさか)直政さん、ジャズピアニストの大西順子さん、数学者の伊藤由佳理さん、プロバスケット選手の宮田諭さん、京大学長の山極寿一さんら幅広いジャンルの面々が登場する。
 六平さんは若者に「自由に生きてほしい」とエール。伊藤さんは、名古屋大で理系の女性研究者が集まり、相談し合える場をつくった経験を紹介し「こうした『なかったらつくっちゃえ!』という精神は国高で培われた」と振り返った。

1980年、都立高校で初めて夏の高校野球に出場した国立高校=甲子園球場で

 この種の記念誌は寄稿や関係者の聞き書きが多いが、取材、執筆はすべて外部のライターに依頼した。「身内の目線でなく、客観的に学校を描写できた。教育関係者や、これから受験先を考える中学生の親子にも読んでもらいたい」と同窓会事務局長の八重樫渉さん(68)。事務局顧問の柴沼君暁さん(78)は「国高というユニークな公立高校がどのようにできあがったかが分かる本になった」と胸を張り、「全国のほかの公立高の卒業生も、ぜひ本を作って母校を自慢してほしい」と薦めている。
<国立高校> 1940年、東京府立第19中学校として開校。48年の学制改革で現校名に。当初は男子校だったが、50年に男女共学となった。
 国高物語は220ページ、1000円(税別)。5000部発行し、在校生や学校関係者らに配布した。約1500部を地元の書店やアマゾンで販売している。問い合わせは三鷹市下連雀の同窓会事務局=電0422(72)0350=へ。
 文と写真・林朋実
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