死者10万人超 コロナで米国の分断深まる 共和・民主の対立も重なり

2020年5月29日 06時42分
 新型コロナウイルスによる米国の死者が二十七日、十万人を突破した。被害状況をみると、死者の集中した都市部を抱える州と地方の州では明確な違いがある。大統領選に向けた共和・民主両党の政治対立とそのまま重なっており、未知のウイルスに対応する中で、米社会の亀裂は一層深まっている。 (ワシントン・金杉貴雄)

■油断と誤算

 「検査数が今日、世界最多の千五百万件を超えた。安全に(国を)開こう!」。トランプ大統領は二十七日、ツイッターにそう書き込んだが同日、世界最悪の「死者十万人」を超えたことには触れなかった。
 米国の新型ウイルス対応は油断と誤算の連続だった。政権は死者ゼロ、感染者七人の報告しかなかった一月三十一日の段階で中国からの入国禁止を決めたが、その後一カ月以上はイラン以外に禁止措置を拡大せず、事実上の「空白期間」が生まれた。トランプ氏は「ウイルスは消えてなくなる」などと軽視。危機感はほとんどみられなかった。
 実際には二月から三月にかけ、欧州経由のウイルスが、全米に広がっていたとみられている。欧州からは二月だけで百八十万人以上が入国。検査の遅れもあり表面化しなかったが、米ノースイースタン大の研究では、三月一日には未検出の感染者がニューヨークで既に一万人以上、他の大都市でも数千人に上っていた。
 欧州からの入国を禁止したのは三月十三日。ニューヨーク州のクオモ知事は「表玄関は閉じたが、裏口は開けたままだった」と政権の“失敗”を批判する。
 トランプ氏は死者数の予測も四月に「五万〜六万人になる」と楽観論を唱えたが、五月中に十万人を超えた。感染者百七十万人についても、検査増の「名誉の印だ」と開き直っている。

■青と赤

 新型ウイルスの死者は経済格差が大きい大都市に集中している。大都市では保守的な共和党よりも格差是正を主張する民主党が強い。新型ウイルスの死者数上位十州のうち、八州が民主党知事の「青い州」だ。死者十万人の三分の二はこの八州が占める。
 これらの州は、医療や経済で多額の支出を必要とし、連邦議会に五千億ドル(約五十四兆円)規模の支援を要請中だ。だが共和党のトランプ氏は大統領選を控え「民主党がお粗末に運営した州を納税者がなぜ救済しなくてはならないのか?」と党派対立を持ち込む。
 被害が少ない地方の州は、共和党知事の「赤い州」が多い。こうした州では「外出禁止などの規制で経済的損害をこうむっている」との不満がくすぶる。
 死者数上位のうち、中西部ミシガン州や東部ペンシルベニア州などは大統領選の勝敗を左右する激戦州でもあり、トランプ氏の支持者が経済活動の再開に慎重な民主党知事への抗議活動を展開している。
 被害の大きい青い州では感染拡大の再来や秋以降の第二波に警戒心が強い。一方で、赤い州のビーチやプール、行楽地ではマスクも着けない人がごった返し、何事もなかったかのようなにぎわいをみせはじめた。
 「米国は既に分裂しているが、ウイルスの攻撃を受け、さらに激化した」
 フーバー研究所の戦史家ビクター・ハンソン氏は米ナショナル・レビュー誌への寄稿でそう強調している。

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