アマビエの御利益を  ユーチューブで講談 / 似てる!?師匠を絵に

2020年5月29日 07時22分
 新型コロナウイルスの感染拡大で、疫病の流行を予言し、それを鎮めるといわれる妖怪「アマビエ」に熱い視線が注がれている。“半魚人”妖怪の奇妙なパワーを伝えようと、講談師や落語家が独自の発信をしている。寄席芸人も苦境が続く日々だが、アマビエの御利益で終息が見えてきた? (ライター・神野栄子)

神田山緑の「アマビエ物語」に登場するアマビエ。イラスト・有馬祐己

 「沖の方から光る一筋の光。だんだんと岸の方へすっと近づいてまいります」
 講談師の神田山緑(43)がユーチューブで配信している新作「アマビエ物語」の一節。六分ほどのコンパクトな一席に、アマビエ伝説の一端や疫病を退散させるゆえんなどを分かりやすく口演している。
 発祥は江戸時代後期の一八四〇年代。肥後(現熊本県)の海から姿を見せたアマビエが「今年から六年は豊作だが、病も流行する。その時には私の姿を絵にして人々に見せよ」と告げ、海中に消えた。長い髪、くちばしのような口、ウロコのある胴体…。コロナ禍ではネットなどでアマビエの絵が世界中に拡散、「終息のお守り」のようになっているという。

ユーチューブ「神田山緑のさんちゃんねる」より「アマビエ物語」の一場面

 妖怪好きという山緑は「ツイッターで文献や資料提供を呼び掛けたら、多く寄せられ、創作の励みになった」と広がりを実感。折しも高座はすべてキャンセルとなり、舞台に上がれない日々。そんな時、「友達から『コロナの情報を講談で分かりやすく伝えてよ』と背中を押された。これが僕の使命だと思った」と奮起した。
 講談を教えている一般受講生がアマビエをカードに描き飲食店に配る活動をしていたことも知り、オリジナル講談を仕立てることになった。
 その後、「新型コロナ啓発講談」と称した作品を次々配信している。最新の第四作は、地元の東京都中野区の飲食店を応援する物語。「コロナをきっかけに、世相の話題をニュース講談として伝えていきたい」と続けていく。

古今亭志ん五の「志ん橋アマビエ」

 似顔絵が得意な落語家の古今亭志(し)ん五(44)は自身のツイッターに、マスク姿の師匠古今亭志ん橋(きょう)(75)をアマビエ化したイラストを掲載したところ大反響。フォロワーらから「待ち受け画面にしています」「商店街のポスターにしたい」などの話が相次いだ。
 三年ほど前から落語会「渋谷らくご」の月刊フリーペーパーに芸人の似顔絵を描き、ユニークな作風に定評がある。

古今亭志ん橋

 初めて師匠を描いたという志ん五は「師匠はいつもニコニコ、人を幸せな気持ちにさせてくれる。流行病(はやりやまい)を退散させるアマビエに大好きな師匠を重ねてみた。とにかく一日も早く収まってほしいと祈って描いた」と話す。「師匠のアマビエがお守りになるとうれしい。切り取ってどこかに貼ると御利益がありますよ」としゃれた。
 アマビエにされた志ん橋は「よく似てるねえ。この絵を見てみんなが笑って、コロナ終息するといいね」と話していた。

アマビエのイラストがヒットしている古今亭志ん五

◆都内の寄席は即再開ならず

 緊急事態宣言が二十五日に解除されたが、東京都内の常設の寄席は即再開とはいかないようだ。上野の鈴本演芸場、新宿末広亭、浅草演芸ホールは六月一日の再開を目指しているが、二十九日に発表が見込まれる東京都の休業要請緩和の状況を見て判断するという。池袋演芸場はしばらく休館を継続する。日本橋や上野などで講談の定席も運営する永谷商事は六月一日再開の予定。

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