三味線に緩まない糸巻き 握力弱い高齢者 おこもり稽古も安心

2020年5月29日 07時22分

緩まないようにねじを取り付けた糸巻き

 新型コロナウイルスは三味線の愛好家にも影響を及ぼしている。外出もままならない状況が続き、指導を受けられない高齢者ら握力の弱い愛好家にとって、緩んだ弦を締め直すことがネック。稽古を断念してしまう人もいるという。こうした中、東京都内の三味線専門店が考案した「ゆるまない糸巻き」のねじが脚光を浴びている。使用する高齢の愛好家は「安心して自宅で稽古できる」と喜んでいる。 (ライター・神野栄子)

「ゆるまない糸巻き」を使って安心して稽古に励む中村聡憲さん

 考案したのは、世田谷区の亀屋邦楽器の芝崎勇二会長(81)、勇生(いさお)社長(52)の父子。職人が一年がかりで商品化した。既に五年間で約二千丁に取り付けたヒット商品となっている。
 三味線の糸巻きの先端に金具(ねじ)を付ける。そこの部分にあらかじめ入れた「ねじ受け」とねじがかみ合い、締まった状態をつくり出す。ねじはそんなに力を入れずに指で調節できる。しかも、三味線の音質も変わらないという。
 長唄や地唄などは曲の途中で変調があり、糸巻きを回して調弦し固定させる必要がある。高齢になると握力が弱くなり、糸巻きに力を入れても思うように押し込めず、戻ってしまう。だが、このねじができたおかげで、高齢演奏家の悩みが解消した。

緩まない三味線糸巻きについて解説する亀屋邦楽器の芝崎勇生社長=東京都世田谷区で

 「『晴れ舞台で糸巻きが戻ってしまい、台無しになった』『三味線を諦めた』という話を聞くたびに、身につまされた」と五年ほど前のねじ考案のきっかけを話す勇二会長。勇生社長は「三味線など古典楽器は手を加えることを嫌うが、『ゆるまない糸巻き』だけは受け入れられた」と話し、「家で三味線の稽古ができる一助になっている」と喜ぶ。価格は二、三万円程度。

と芝崎勇二会長=東京都世田谷区で

 長唄三味線歴十年の会社経営の中村聡憲(としのり)さん(73)は、握力が落ちたと感じて「ゆるまない糸巻き」を取り付けた。年に数回ある東京・国立劇場の舞台に安心して出演しているという。「糸巻きが戻る心配もないのでミスもなくなり、気持ちが楽になった。日々、舞台をイメージして家で練習に励んでいる」と話している。
 亀屋邦楽器=(電)03・3429・8389。メールやファクスなどでの注文も可能。

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