非正規社員襲うテレワーク差別 妊娠、持病ですら認められず

2020年5月29日 07時28分

ZOOMで取材に応じた妊娠中の女性。派遣契約書を手に「契約の打ち切りが不安」と漏らした=東京都内で

 新型コロナウイルスの感染拡大で企業に在宅勤務(テレワーク)が定着する中、非正規社員には在宅勤務が認められない問題が深刻化している。非正規の場合、妊娠中や持病がある人ですら出社を強制される例が多い。非正規社員への差別的扱いを禁じる同一労働同一賃金が4月から導入されたが、賃金格差どころか、正社員より高い感染リスクという「命の格差」に直面している。 (岸本拓也)
 「派遣は出勤か、自己都合で休むかの二択です」
 四月上旬、東京都内の大手企業で働く派遣社員の三十代女性Aさんに、人事部社員は言い放った。Aさんは妊娠中。妊婦が肺炎になると重症化しやすく、コロナ感染した場合のリスクがあることから、満員電車での通勤が不安だった。
 仕事はパソコンの入力。正社員の妊婦は三月から在宅勤務が認められており、Aさんは「自分も」と相談した。しかし派遣先は「派遣の場合は不可」の一点張り。やむなく休業を選んだが、休業手当も派遣会社に拒否され収入ゼロに。
 五月二十六日に緊急事態宣言が解除された後も正社員の妊婦は在宅勤務が認められた。「なぜ派遣にだけテレワークを認めないのか説明も十分にしてくれない」。Aさんは怒る。
 四月から施行された同一労働同一賃金関連法は賃金だけでなく、待遇差別も禁じている。厚生労働省は非正規というだけで在宅勤務を認めないのも違法とするが、企業の認識は薄く、同省の地方労働局でもルールは周知されていない。Aさんの夫は労働局に救済を求めたが、「在宅勤務の扱いは法律条文になく、問題はない」と門前払いされた。
 同種の相談は労働組合団体にも寄せられ続ける。
 「感染したら大変だ。出社するな」。都内の派遣社員女性Bさんは、派遣先の管理職が正社員を叱るのを見て悲しくなった。じゃあ派遣は感染してもいいの?
 Bさんにはぜんそくの持病がある。感染時に重症化するリスクがあるので在宅勤務ができないか頼んでみたが、「有給休暇で休んで」との答えだった。
 一連の企業対応からは派遣社員の立場の構造的な弱さが改めて鮮明になる。派遣の労働環境を整えるのは雇用主である派遣会社の責任だが、在宅勤務を認めるかは派遣先の企業次第だ。派遣会社は顧客である企業に遠慮し、派遣社員の処遇はなおざりにされがちだ。
 妊婦に関しては五月から妊婦が医師診断を受け在宅勤務などを希望したときは、企業に応じるよう義務付けられたが、妊婦が雇い止めなどを気にして申告できるか懸念が残る。日本労働弁護団の江夏大樹弁護士は「派遣会社と派遣先企業の双方の責任があいまいになり、派遣社員が不平等な扱いを受けている。配慮が必要な妊婦らへの安全配慮義務を果たさない企業の責任は重い」と指摘する。

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