コロナ禍で困窮者増えているのに 取り立て強化の改正法は必要か

2020年5月29日 07時35分

5月の連休中も閑散とした商店街。倒産急増が懸念される中、債権回収側に有利な法改正は必要か=富山市総曲輪で

 バブル崩壊後の銀行の不良債権回収を目的にできた債権回収会社(サービサー)の業務拡大を目指す「債権管理回収業に関する特別措置法」(金融サービサー法)の改正案が、議員立法で今国会に提出される動きが出ている。コロナ禍で企業倒産や経済的な困窮が広がる中、債務者を追い込む「不要不急」な法改正にならないか。 (片山夏子)
 金融サービサー法は、銀行の不良債権問題が深刻化していた一九九八年に、議員立法で成立した。銀行が不良債権をサービサーに格安で売却し、損失処理を確定させることが目的のいわば時限立法ともみなされていた。サービサーが扱える債権は主に銀行融資などの「貸付債権」などに限定されている。
 市民団体「銀行の貸し手責任を問う会」事務局長の椎名麻紗枝弁護士は「バブル崩壊後の不良債権回収では、外資系のハゲタカファンドが参入し、法を悪用して次々と企業を乗っ取った。サービサーは不良債権回収という役割を果たし、すでに必要がなくなっている」と指摘する。
 今のサービサー業界は外資系ファンドは手を引き、前身が消費者金融だった企業などが残っているという。銀行の不良債権など大口債権はなくなり、小口債権が主で、「業界は業務を拡大し、生き残りを図ろうとしている」(椎名氏)。すでに、債権買い取りではなく、取り立て業務を受託する形で奨学金や税金も扱うようになっている。さらに電気・ガス料金なども同様に扱えるよう二〇一八年に改正案が国会に提出されたが、審議未了で廃案に。だが、今国会で再提出の動きが高まっている。
 椎名氏は「サービサーは法をたてに厳格な取り立てをするのが特徴。裁判、差し押さえ、裁判…と、債務者からは取り立てられないので、連帯保証人を身ぐるみはがしていく。自宅や給与、事業者の売掛金の差し押さえなど、生活の手段を根こそぎ奪っていく」と批判する。
 気になるのは、コロナ禍で倒産や経済的困窮者が増える中、なぜ、こうした批判もある債権回収側に有利な法改正をするのかという点だ。法改正推進派は「コロナ禍で再び不良債権が大幅に増えるとなればサービサーの役割が拡大される」とする。法務省の担当者も「不良債権は今も相当程度出ており、サービサーや銀行から業務拡大の声が出ている」とその必要性を説明する。コロナ禍だからこそ、というわけだ。
 しかし、「中小企業等金融債務者保護推進議員連盟」の原口一博衆院議員(国民民主)は「緊急事態宣言で経済活動が止まり、企業倒産や生活困窮者の命の危険も危ぶまれている。そんな時に公共料金までの業務拡大を議論すべきことなのか。今はむしろ債務者保護の観点が大事。日本の技術を持つ中小企業も守るべき時だ。経済が止まっている今の流れに逆行している」と話す。
 椎名氏も「改正案には債務者保護という文言は入るようだが、具体的に規制する明文が入らなければ意味はない。法務省の監督を強化するというが、具体的にどう取り締まるのかがない。これではただの権限拡大だ」と批判する。
 「中小企業サポートネットワーク」主宰で、立教大の山口義行名誉教授(金融論)はこう訴える。「法ができた時は国の経済のために、いかに不良債権回収をするかが優先され、強引なやり方が見逃された。今はそれは許されない。法には債務者を守る具体策を盛り込み、適切な回収かをチェックする機関が必要。役割を終えた今、そもそもサービサーの必要性が今あるのか。そこから議論すべきだ」

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