派遣切られ、絶望しかない ひとり親世帯コロナ禍でひっ迫

2020年5月29日 08時56分

新型コロナウイルスの影響で出勤できなかった女性の4月分の給与明細

 「母子家庭です。五月いっぱいで派遣切りされます」−。栃木県内の女性(49)から、本紙「ニュースあなた発」に切迫した声が届いた。話を聞きたいと記者が連絡すると、返事が来たのは一週間後。落ち込み、寝込んでいたという。コロナ禍で、ひとり親世帯の経済状況が深刻化している。「絶望しかない」という女性に現状や思いを聞いた。 (奥野斐)
 女性は、中学三年の長男(14)と八十代の実母の三人暮らし。おととし秋から自動車部品工場で働く派遣社員だ。手取りは多い月で十八万円ほど。決して十分ではないが、日中の勤務で週休二日。子どもの塾の送り迎えもでき、同僚ともうまくやっていた。二カ月ごとの契約更新だったが、長期の募集で、今後も働けると思っていた。
 だが「コロナ」が生活を一変させた。二月ごろから徐々に仕事が減り、四月頭に「ちょっと休んでください」と言われて自宅待機に。その後も「今週も休んでくれる?」と繰り返され、出勤しない日が続いた。
 四月下旬、派遣会社からの電話で「契約を更新しない。五月末で終わり」と告げられた。頭が真っ白になった。その上、三月末のけがで保険金取得を勧められ、四月分の給料はゼロ。振り込まれたのは家族手当だけだった。「(特別定額)給付金の十万円だけが頼り…」と力なく話す。
 育ち盛りの息子に少しでも食べさせようと、女性は一日三食取っていた食事を一食にした。光熱費や公営住宅の月一万円余りの家賃は、貯金を取り崩して充てたが、底を突くのは時間の問題。「自分が死んだ時に子どもが困らないように」と入った生命保険の解約も考えている。
 十年ほど前に離婚した。正社員として病院に勤めたこともあったが、条件が合わず、その後は派遣の仕事でつないできた。今も求人を探したり、派遣会社が次の職場を探してくれたりしているが、コロナの影響で募集は減り、年齢もあって、見つからない。
 政府は給付金を支給するというが、手元に届くまで、あと数万円の貯金でしのげるかどうか。女性は語気を強めて訴えた。「安倍さん(晋三首相)は『寄りそう』と言うけれど、それだけでは生きられない。ひとり親で、雇用も守ってもらえない私たちに、死ねと言っているようなもんじゃないですか」

◆59%が収入減11%はゼロに

 ひとり親家庭を支援するNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」(東京)が四月に実施したアンケートでは、児童扶養手当を受給しているひとり親世帯のうち、59%で収入が減り「収入が無くなった」と回答した人が11%に上った。非正規雇用が多く、休業や勤務時間が減らされた影響が出ているとみられる。
 一方、子どもの学校の休校により、九割以上の家庭で昼食代など支出が増加。「親は二日に一度の食事にしている」「前より切り詰め、貯金で何とかしている」などの声が寄せられ、厳しさを増しているという。
 政府は、低所得のひとり親世帯に臨時特別給付金五万円を支給することなどを盛り込んだ第二次補正予算案を二十七日に閣議決定。新型コロナの影響で収入が大きく減少した場合は、追加で五万円を支給する。
 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石千衣子理事長は「『一日一食』など、このままでは衰弱して命にかかわるような状況が起きている。一刻も早い支援が必要」と話した。

ある日の女性の食事はチーズ1個。「今日はこれだけで乗り切る」と話した=本人提供


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