アマビエならぬ 「アマビコ」 足利学校古文書に3本足の妖怪

2020年5月29日 14時08分

足利学校の古文書から見つかった妖怪「アマビコ」=栃木県足利市で

 新型コロナウイルスに絡んで話題となっている、江戸時代に疫病退散に御利益があったとされる妖怪「アマビエ」と同じような役割を持つ妖怪「アマビコ」を描いた絵が、国史跡の足利学校(栃木県足利市)が収蔵する古文書から見つかった。名前に「アマ」がついた同種の妖怪の記録は福井県でも見つかっており、疫病を恐れ、穏やかな暮らしを望んだ当時の人々の願いがこもっているようだ。 (梅村武史)
 アマビコの記載は、大正五(一九一六)年に発行された百科事典「廣(こう)文庫」にあった。それによると、江戸時代に肥後国(熊本県)に現れたとされる。「我は海中に住む」とし「今年より六ケ年の間豊作。しかしながら諸国病多く、人間六分は死す、しかれども我が姿を書きしを見るものは、病にあわず」などと予言したという。
 そして「昔日叢書(せきじつそうしょ) 長崎怪異書」から天保十四(一八四三)年の話として解説し、三本足のサルのような絵も添えている。

「越前国主記」の写本に描かれた「アマビコ」=福井県立図書館提供

 一方、アマビエも肥後国に現れたとされる。京都大付属図書館が所蔵する弘化三(一八四六)年の瓦版に描かれた絵では、胴体に人魚のようにウロコがある。「疫病がはやったら私の姿を描き写し人々に見せよ」と語った部分が会員制交流サイト(SNS)などで注目を集め、広く知られるようになった。
 「アマビコ」と呼ばれる妖怪は、福井県立図書館の「越前国主記」にも伝わる。姿は異なるが、足利学校のアマビコやアマビエと同じように、疫病流行時は自身の姿を描き写すよう促す。描かれたのも前二者とほぼ同時期の天保十五(一八四四)年だ。
 アマビエを研究する同県文書館主任の長野栄俊さん(48)は「予言獣といわれ、類似の妖怪は十数例ある。除災招福の御利益がある“護符”の意味もあったのでは」と分析する。

弘化3(1846)年の瓦版に描かれた「アマビエ」=京都大付属図書館提供

 足利学校事務所の大沢伸啓さん(60)は「疫病に関する蔵書を調べていたら、偶然に出てきた」という。「アマビコの末の『コ』と『エ』の表記が似ており、混同されながら、いくつかの妖怪が生まれたのでは」と推測する。
 さて、どの妖怪の霊験があらたかなのか。足利学校のアマビコの絵は当分の間、同校で一般展示される。

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