「テラハ」木村花さん死去の波紋 リアリティー番組の作り方はこれでいいのか

2020年5月30日 07時14分

制作と放送の中止についてコメントが掲載された「テラスハウス」の番組公式ホームページ

 フジテレビ系の人気リアリティー番組「テラスハウス TOKYO 2019−2020」に出演していた女子プロレスラー木村花さん(22)の死去を受け、同局は同番組の制作と放送を中止すると発表した。木村さんは自殺とみられ、一部の視聴者によるネット上の誹謗(ひぼう)中傷の影響が指摘されているが、番組制作側に問題はなかったのか。誰もがネットで意見を書き込める時代にあって、こうした番組のあるべき作り方とは−。現場を知る制作者や、識者に聞いた。 (原田晋也)
 「こういうことが起こっても、不思議ではない」。2017年、インターネットテレビ局「AbemaTV」の番組「オオカミくんには騙(だま)されない」の初代プロデューサーを務めた番組制作会社「テレビマンユニオン」の津田環(たまき)プロデューサーは木村さんの訃報にふれ、たまらない気持ちになったと明かす。
 「オオカミくん−」は、恋がしたい女子高生と男性が顔合わせし、恋に落ちていく様子を追うリアリティー番組。津田プロデューサーは同種の番組に携わるのは初めてで「本当にリアルで、台本がない」と驚いた。デートの組み合わせなどの演出はしても、思惑通りに運ぶことはなかった。
 一方で、演技ではない生の恋愛感情を扱い、ネット上で話題になることについて「本人がいいと言っているとはいえ、まだまだ子ども。何かがあった時、暴走してしまう怖さを感じた」。出演者が一人暮らしかどうか、ダイエットをしすぎていないか、家族との関係は良好かなど常に気を配り、何でも話しやすい環境をつくるなど細心の注意を払っていたという。
 津田プロデューサーはこうしたリアリティー番組について「出演がきっかけで伸びていく人たちもいる。いいところもある」と話す。しかし、現状を「ドラマより安く手間もかからず作れる上、若い視聴者がよく見るので、乱立している」とみる。
 「テラスハウス」の問題点として、出演者本人のSNSで番組宣伝をさせていたことや、放送予定期間が1年以上に及んでいたことなどを指摘する。「出演者は人格をすり減らしてやっている。もっとお金と時間をかけて、丁寧に作ってほしいということに尽きる」
 構造的な問題を指摘する声もある。放送倫理・番組向上機構(BPO)元委員の水島久光・東海大教授(メディア論)は「作り手側は、自分がどういうコンテンツを作っているのか本当に分かっていたのだろうか」と疑問を投げかける。
 水島教授によると、リアリティーショー(番組)は欧米で始まり、1990年代にジャンルとして確立。「(一方通行の)テレビだから成立する」形式だった。「テレビは作り手と受け手に距離があり、視聴者はリアルな番組として楽しんでいた。しかし、誰彼構わず意見が言える双方向なネット社会でリアリティーショーをやれば、出演者は間違いなく追い込まれる」と指摘する。
 通常、テレビ番組が原因で問題が起こればBPOが放送倫理違反がなかったか検証するが、今回のケースは当てはまらない可能性があるという。
 「BPOで扱うのは、放送番組の表現や作り方に倫理上の問題がなかったか」と現行の制度を説明、「放送後の視聴者の反応など、テレビの外で起こった問題は非常に議論しにくい」と話した。その上で「ネット時代のコンテンツがどうあるべきなのか、社会的な合意が全くできていないことが一番大きな問題だ」とした。
 「テラスハウス」は、ネット動画配信サービス「ネットフリックス」で先行配信され、1カ月遅れてフジテレビ系で放送されていた。放送は打ち切りとなったが、ネットフリックスでは引き続き配信されている。

◆「認識が不十分」 フジが検証へ

 フジテレビの遠藤龍之介社長は二十九日、「テラスハウス」に出演した女子プロレスラー木村花さんが死去した問題で、「(出演者の心の救済などに)私どもの認識が十分ではなかった」とし、検証する意向を報道各社に文書で示した。
 フジテレビ企業広報室によると、検証は出演者や関係者への聞き取り、番組制作資料の確認、素材VTRの確認、SNSの反応の調査など、事実関係の精査を考えているという。検証結果の取りまとめ時期は未定。関係者の処分について担当者は「検証の結果次第」と話している。
 遠藤社長は「私どもがもっと細かく、継続的に、彼女の気持ちに寄り添うことができなかったのだろうかと慚愧(ざんき)の念に堪えません」などとコメントした。

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