<新型コロナ>全国学力調査は中止…でも県実施 行事よりテスト優先? 教育現場から疑問の声

2020年5月30日 07時34分
 小中学生の学力の伸びを測るとして、県教育委員会が毎年春に実施している県学力・学習状況調査が、今年も多くの自治体の小中学校で実施されることが分かった。新型コロナウイルス対策の長期休校の影響で授業時間が足りない中、一日とはいえテストに費やすことに、現場の教師からは「行事はつぶしてもテストを優先するのか」などと疑問の声が上がっている。(寺本康弘)
 学力調査は、県教育委員会が、政令市のさいたま市をのぞく県内の全六十二市町村で二〇一五年から毎年四月に一斉に実施してきた。対象は小四〜中三で、科目は前年度に学習した内容の国語、算数(数学)、英語(中学二、三年のみ)。学習意欲や生活習慣に関する質問調査もある。高校入試や通常の成績評価には反映されないとしている。
 コロナで長期休校となった今年、文部科学省の全国学力調査は中止となった。しかし、県教委は県の学力調査について、実施できる市町村で六月一日から七月十六日の間に実施する方針を決め、今月、各教委に意向を聞いた。
 その結果、五十八市町村が参加すると回答(二十二日時点)。理由を取材したところ、「授業時間の確保に支障はない。学力調査に向けて復習したり、調査のさまざまな問題に取り組むことで学力がつく」(熊谷市教委)、「これまでの取り組みの検証や指導改善に調査結果は重要」(春日部市教委)などと説明した。
 一方、越谷市や八潮市などは不参加の予定。八潮市教委の担当者は「調査も大切だが、まずは休校となった四、五月分の指導をしっかりするなど授業時間を確保するため」と説明した。
 また、所沢市教委は、各学校で考え方が異なることが予想されるとし、検討中という。
 実施する自治体でも、現場の教師から疑問の声が上がる。授業時間確保のため県教委は各市町村に対し、学校行事の延期や中止、夏休みの短縮、土曜授業などで対応するよう求めている。その中で、学力調査を実施すれば貴重な一日が失われるからだ。
 県東部の小学校の三十代男性教諭は「子どもたちにとって大切な運動会や音楽会などは中止を検討し、テストはやる、というのは、子どものことを思った学校運営か」と訴える。行事をやめるなどさまざまな犠牲を払っても、現状では小学校四、五年生は通常の授業時間に三十時間程度足りなくなる恐れがあるという。
 県西部の中学校で三年生の担任をする五十代女性教諭は、「最も心配なのは子どものストレス」と話す。学校は再開されてもしばらく部活はできず、合唱もできないなど通常に戻るには時間がかかる。「ストレスを抱えた子どもたちに、テストはさらなる負担になる」。勉強が苦手な子はもちろん、得意な子もいつも通り学習ができていないことでテストに不安を感じる可能性があると指摘した。
 「この状況で、市町村教委に意向を聞く県教委の姿勢もおかしい」という声も。県教委の担当者は「これまでも各市町村が学力調査の結果を教育行政に生かしているため、実施したい自治体もあると考え、本年度は協力いただける市町村で実施する判断をした」と話している。
     ◇
 政令市のさいたま市は、例年一月に、小三〜中三を対象にした独自の学習状況調査を行っている。科目は国語、算数(数学)。本年度の実施については「検討中」とし、現場から賛否の声などはまだ届いていないとしている。(前田朋子)

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