ペシャワール会「私も力になりたい」 中村哲さんの志を継ぐ長女

2020年5月30日 13時57分

福岡市のペシャワール会事務所で、思いを語る中村哲さんの長女秋子さん

 アフガニスタンで人道支援事業に取り組む福岡市の非政府組織(NGO)「ペシャワール会」現地代表の医師中村哲さんが殺害されてから間もなく半年。事件後、会の活動に携わるようになった長女の秋子さん(39)が共同通信の取材に初めて応じ、「事業が続くことが父の願い。私も力になりたい」と志を継ぐ決意を語った。
 秋子さんは週末を中心に福岡市内のペシャワール会の事務所に足を運び、他のボランティアに交じり事務作業などを手伝う。「(用水路建設などの)父の活動に元々興味はあった」というが、「私がいたらやりにくいだろうなというのもあった。父も『恥ずかしいから来んでいいけん』と言っていた」ことから、深く関わることはなかった。
 中村さんは長年、アフガンやパキスタンの国境付近で貧困層への医療支援に取り組んできた。二〇〇〇年にアフガンで干ばつが起きてからは用水路を建設し、農地の復興や拡大を推進してきたが、昨年十二月四日、アフガン東部ナンガルハル州で凶弾に倒れた。
 秋子さんは「人生を懸けてやっていた。危ないからやらなくてよかったと言う人は家族で誰一人もいなかった」と振り返る。だから、母の尚子さんとアフガンまで遺体を迎えに行き、ひつぎの中の中村さんと対面した時は「お疲れさまでした」とねぎらったという。
 一年の三分の二は現地で活動していた中村さんにとって、福岡県大牟田市の自宅で過ごす時間は貴重な家族だんらんの時だった。秋子さんは「帰国時に車で最寄り駅まで迎えに行くのは私の仕事だった」と懐かしむ。
 事件直前の十一月も一週間ほど帰国し、尚子さんや長男で弟の健さんらと大分県に登山に行ったという。仕事で行けなかった秋子さんに、中村さんは「来年はみんなで日程を合わせて行こう」と話したが、「来年」が来ることはなかった。
 ペシャワール会の手伝いをするようになり「こんなにたくさんの人が関わっているんだ」と実感した。「中村哲の娘」という特別な立場ではなく、会の一員として力になりたいと思いつつも「娘の私が話すことで、広く活動を知ってもらえるきっかけになればうれしい」と、中村さん譲りの穏やかな表情を浮かべた。

幼少期を過ごしたパキスタン北西部ペシャワルで、写真に納まる(左から)秋子さんと哲さん=同会提供

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