受刑者の社会復帰支援もストップ 孤立どう防ぐ

2020年5月30日 14時07分

今年2月、受刑者に「発表者の長所を見つけよう」と話すメンバー=埼玉県川越市の川越少年刑務所で

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、仮釈放を控えた受刑者の社会復帰支援が一部中断している。中には、受刑者が自らの体験を語り、人に聞いてもらうことでコミュニケーション能力を身に付けられるようにするという民間の支援活動も。仮釈放後に社会とつながりを持てず、孤立して再犯に至るケースも少なくないことから、支援者は「コロナで不安が渦巻く社会に寂しく送り出すのは胸が痛む」と再開を待ち望む。 (浅野有紀)
 出所予定者は、社会復帰支援として二週間かけて「釈放前指導」を受ける。職員による「保護観察期間の心構え」などのほか、保護司や会社経営者など民間ボランティアも講話する。四月上旬の政府の緊急事態宣言を受け、法務省は全国の刑務所に民間の指導を控えるよう通達した。
 埼玉県の川越少年刑務所では、民間ボランティアの一つ、NPO法人「ガベルサポーターズ」(さいたま市)が、受刑者のスピーチ指導を行っている。虐待を受けて育ち、暴力でしかコミュニケーションが取れなかった米国の受刑者が、スピーチ練習を通して対話を学んだというニュースをきっかけに、二〇一五年から日本で始めた。メンバーは、教員や保育士、元受刑者ら八十人。
 二月上旬に開かれた講座では、参加した十六人の受刑者のうち希望者が「十年後の自分」などをテーマに堂々とスピーチに臨んだ。
 ある受刑者は「十六歳から八年間、ここ(刑務所)で生活しました。最初は自分の起こした事件が受け入れられなくて、人に迷惑ばかり掛けてしまった」と振り返り、「自分と同じように罪を犯してしまった人たちを雇えるような人間に成長したい」と話した。
 聞き役の受刑者が「このままじゃいけないと感じて変われたのはすごいと思う」とたたえると、教室は優しい空気に包まれた。
 この日の講座に出た二十代の男性は仮釈放後、団体のホームページに感謝の言葉を寄せた。取材に「人と話す機会がないので、社会にうまく適応できるか不安だった。応援してくれる人がいると知り、勇気をもらえた」と話す。仕事も決まり、緊張しながらも周囲と会話できているという。
 活動が評価され、川越少年刑務所以外では初めて、名古屋刑務所でも導入されることになった。打ち合わせを重ねていたが、新型コロナの影響で中断している。代表で言語聴覚士の梅本和正さん(57)は「受刑者は人に話を聞いてもらえない経験を繰り返している。自分の思いを人前で伝えることは、助けを求める訓練になり、再犯防止にもつながるはず」と意義を語る。
 川越少年刑務所の担当者は「自分の考えを伝えることは、社会生活に求められる力。こうした民間協力者が入る効果に勝るものはない」と受け止める。緊急事態宣言下に民間指導ができない分をカバーしようと、一人部屋で映像教材などを渡して学んでもらっているが、第二波の恐れもあり再開のめどは立っていない。

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