唾液にウイルスいっぱい 鼻の粘液の5倍の報告も

2020年5月30日 14時05分

中国・上海ディズニーランドのレストランで、テーブルを消毒する係員=11日(共同)

 唾液を使って新型コロナウイルスの感染を調べるPCR検査が近く承認される見通しだ。鼻の奥の粘液よりウイルス量が多そうなことが分かってきたため。陽性確認が便利になるが、逆に言えば、つばから感染するリスクが高いことも意味する。何に気を付けたらいいのか。 (佐藤直子)
 「患者の唾液から検出されたウイルス量が、鼻の奥(の粘液)よりも多かった」。感染症専門医の河野茂・長崎大学長は語る。
 同大チームは今月下旬、長崎県に停泊中のクルーズ客船コスタ・アトランチカで感染が確認され、健康観察が続く乗員百四十四人のうち六十三人を調査。感染確認の約三週間後に唾液と鼻の奥の粘液を採取し、ウイルス量を比較した。唾液から多く出たのは二十六人、鼻の粘液から多く出たのは三人。陽性率は鼻の粘液9・5%に対し、唾液は44%に上った。
 米国エール大の研究では、唾液も鼻の粘液も発症直後が最もウイルス量が多く、唾液は鼻粘液の約五倍と報告されている。河野氏は「乗員の検体数は限られているが、エール大の研究は参考になる」と話す。
 なぜ、唾液からウイルスが出るのか。「新型コロナはウイルスの受容体が唾液腺にあるのが特徴。味覚や嗅覚の障害を訴える人が多いのもそのためだ」と鶴見大の花田信弘教授(口腔(こうくう)衛生学)は解説する。
 北海道大の豊嶋崇徳教授(血液内科学)は今月初旬から、入院患者が新型コロナに感染していないか調べるスクリーニング(ふるい分け)検査に唾液を使っている。現在のPCR検査は鼻の奥に綿棒を入れて粘液を採取する方法が主流だが、せきやくしゃみが出やすく、採取する医師らを感染させるリスクが高い。
 「唾液は検尿と同じように容器に検体を入れて提出するだけ。採取の障害になっていた専門医療者もいらず、採取場所や防護具もいらない。感染リスクは減るし、PCR検査を増やす第一歩になる」と期待する。
 一方、唾液にウイルスが多く含まれるなら、感染への警戒もより必要だ。
 英国のロンドンでは三月、タクシー運転手の男性(61)が、新型コロナに感染しているという男につばをかけられた後、感染して四月に死亡。デーリー・テレグラフ紙によると、自分は感染者だと言って警官らにつばやせきを吹きかけるケースが週に二百件ほど起きているという。日本でも今月半ば、愛知県東郷町の施設で「俺はコロナだ」と言って女性職員につばをはきかけたとして、無職の男が威力業務妨害容疑で逮捕されている。
 スポーツ界は対策を進めている。国際サッカー連盟(FIFA)のドーゲ医事委員長は四月、唾液は数時間ピッチに残る可能性があることから、試合中につばを吐いた選手に警告を出すことを検討すべきとの私案に言及。無観客でシーズンを開幕させた台湾と韓国のプロ野球界も、ハイタッチなどとともに、つばを吐くことの自制を求めている。
 花田氏は、イタリアとフランスの研究者が、歯磨き時に使われる洗口剤がウイルスを減らすのに有効とみて、エビデンス(根拠)収集を呼びかけている動きに注目しているという。日常生活でも気を付けられることがあるようだ。
 「会話するときもつばは飛ぶので、マスクをしたうえで、話すときには距離をとる。部屋の床やテーブル、机の上にも唾液が落ちているので、拭き掃除は効果があります」

PCR検査の検体として唾液を採取するための容器(豊嶋崇徳北海道大教授提供)

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