教員いじめ、部活動差別も… 6年で教員69人退職の学校を提訴

2020年5月31日 07時23分

保護者と教員計28人が提訴した橘学苑=横浜市鶴見区で

 横浜市鶴見区の学校法人「橘学苑」が運営する中高一貫校で、生徒の保護者23人と教員5人の計28人が学苑と幹部を相手取り、計約700万円の損害賠償を求め、横浜地裁に提訴した。訴えによると、教員の大量退職や部活動顧問の解任、新型コロナでの学習対策といった学校経営に問題があり、生徒の学ぶ環境が不十分としている。経団連会長だった故・土光敏夫氏が理事長を務めた学校で、何が起きているのか。 (大野孝志)
 「野球部の監督はいわれのない事実で解任された。学苑側から新監督についていくかどうか選択を迫られ、入部届を出し直せとまで言われた。教育現場がこんな状態ではいけない」と原告の一人で野球部員の父親(51)が語る。別の父親(47)は「特定の教員へのいじめが目に余る。子どもの教育環境を整えるため、経営陣の刷新を」と求めた。
 訴えによると、学苑は方針と対立する教員や部活動を差別的に扱い、サッカー部顧問や野球部監督を解任。学苑が関連会社を通じて運営するテニス教室を優遇し、サッカー部のグラウンドをテニスコートにしたほか、屋内コートを生徒より優先して使わせている。また、大量の教員を解雇や雇い止めにし、職場環境に配慮する義務に違反している、とした。
 原告保護者らは在学契約の不履行として、学費相当額の一部の賠償を主張。学苑長や事務長に対しては、保護者説明会で「あいつらはモンスターペアレンツ」と発言したなどとして慰謝料を求めた。
 学苑を一九四二年に女学校として創設した土光登美(とみ)氏は、質素な生活から「メザシの土光さん」と呼ばれた土光敏夫氏の母。敏夫氏は四五年から理事長を務め、その後に経団連会長となった。二〇〇四年に共学となり、現在の理事長は長男の陽一郎氏だ。
 昨年四月には非正規雇用の教員の雇い止めが相次いでいると報じられ、神奈川県の調査で六年間に常勤、非常勤の講師六十九人の退職が判明した。複数の教員が「学校を去ったのは派遣教員を含めれば百人を超える」と指摘する。テニス教室の運営や部活動の差別について、県は調査で「法令違反は認められない」としつつ、適切な対応を学苑に求めた。
 訴えでは、新型コロナで休校中の対応も「あまりにずさん」と指摘した。情報通信技術(ICT)機器を備えた情報室を設け、通常の学費支払いを求めているのに、課題のプリントを郵送した程度だったという。
 学苑が行政から受けた補助金は一八年度決算で四億八千万円超。ICT推進への補助金は一八、一九両年度で計千五百万円超に上る。原告の斉藤宏一郎教諭(52)は取材に「多額の補助金を受け、私学とはいえ公共性は高い。現状は一部の経営陣の私物化が激しい。誰のための学校なのかを考え、正常な学校に戻したい」と訴えた。原告の桜川純平教諭(40)は「不透明な経営を変えなければならない。生徒にも教員にも人生がある。不当な扱いを受けるのを看過できない」と語る。
 「こちら特報部」は取材のため、二十九日に学苑に電話したが、留守番電話にもならず、つながらなかった。ホームページの「お知らせ」では、訴状が届いておらず「コメントをすることはできない状況です」「生徒のことを第一に考えて誠実に対応してまいります」としている。
 私学の経営に詳しい森上教育研究所(東京都千代田区)の森上展安(のぶやす)所長は「日ごろの信頼関係が破綻した印象がある。私学は経営の透明化、経営責任が厳しく問われるようになっている。経営側は不利益な情報であっても、将来像や運営の方針を積極的に示さないといけない」と語った。

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