<代替わり考 皇位の安定継承>(5)性別関わらず第一子を

2020年5月31日 07時26分

◆神道学者・皇室研究家 高森明勅(あきのり)氏

 憲法は皇位継承の「世襲」制のみを定め、皇室典範で「男系男子」に限定している。現在は男系男子にこだわるあまり、世界最古の君主の家柄である皇室それ自体が消滅の危機に直面している。
 皇室典範の男系男子の縛りを削除し、女性皇族の内親王(ないしんのう)に皇位継承資格を認めて結婚後も皇室で活動してもらうのが望ましい。皇位継承方法は、これまでの理念が直系優先主義だったことに照らし、男女の性別に関係なく「直系長子(第一子)」を優先する制度にするべきだ。
 各種世論調査では、女性・女系天皇の容認が七割から八割に上り、国民に愛子天皇待望論もある。過去に女性天皇の前例が八人あり、前近代の法律の「養老(ようろう)令」(七五七年施行)では女帝の子(女系)にも継承資格を認めていた。男系男子に初めて限定したのは明治の皇室典範だ。
 明治には前近代と同様に正妻でない「側室」が存在し、側室が生んだ非嫡出子にも皇位継承資格が認められていた。明治天皇や大正天皇もそうだが、歴代天皇の半数近くは非嫡出子だ。
 もし歴代天皇に正妻しかいなかった場合はどうか。女性天皇と史実性に疑問がある天皇や未婚の天皇などを除き、九十六代の正妻を調べると、三十四人(35・4%)は男子に恵まれていない。一夫一妻制なら三代に一人は跡継ぎの男子がいなかったことになる。
 側室制度は昭和天皇のときに廃止され、現在の皇室典範では非嫡出子という制度的な「安全弁」も無くなった。いまは歴史上、最も制約の厳しい皇位継承制度であり、行き詰まるのは必然だった。
 皇室典範を改正しない限り、将来は悠仁(ひさひと)親王に嫁ぐ女性にとっても男子出産のプレッシャーは想像を絶したものとなり、結婚そのものの障害にもなりかねない。
 一部では、男系男子の縛りを残し、旧宮家系の血筋の独身男性に皇籍を取得してもらう案が唱えられている。だが一国民として生まれ育った人が突然、皇族になっても、国民の信頼と尊敬を得られるだろうか。そもそも旧宮家の男系継承も側室に支えられた歴史を考えると、皇位の安定継承に資することにはならない。 (聞き手・阿部博行)

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