オンライン宿泊 ちょっと熊野へ 「オフ」の再会期し、乾杯!

2020年5月31日 07時42分

ラウンジに集まったつもりで乾杯する「宿泊者」ら。上段(中)がオーナーの後呂さん。下段(中)が筆者=WhyKumano提供

 仕事終わりに、ちょっと和歌山・熊野古道の宿に泊まってきました−。そんな「新しい生活様式」が定着するかもしれない。オンラインで“宿泊”する体験があると聞き、和歌山県那智勝浦町のゲストハウスに「一泊」してみた。

◆初対面で意気投合

 午後8時、ビデオ会議システム「Zoom」で指定された部屋を開くと、ゲストハウス「WhyKumano(ワイクマノ)」に、この日泊まるメンバーが顔をそろえた。
 画面が実際にその場を訪れたような視点の映像に切り替わり、チェックイン。オーナーの後呂(うしろ)孝哉さん(31)が「お部屋はこちらです。ベッドは上段と下段、どちらがいいですか?」と館内を案内していく。木がふんだんに使われた館内は熊野古道をイメージしているそうだ。

ゲストハウス内を案内する「WhyKumano」の後呂さん。画面越しではこのように見える

 ラウンジに集まったつもりで、画面越しに乾杯!
 この日は、筆者を含めて北海道から福岡まで、20〜40代の男女7人が「宿泊」した。みな初対面だが、偶然にも杉並区の人が3人! 地元の話題でも盛り上がっていた。
 パソコン画面を共有する仕組みを使い、後呂さんが写真を見せながら熊野の観光スポットを紹介。日本有数の水揚げ量を誇る生マグロ、豊富な源泉で有名な南紀勝浦温泉、世界遺産・熊野古道、那智の滝…。マグロの刺し身が200円で買える直売所があると聞くと、参加者から次々に「食べたい!」と声が上がった。

◆連日満室の盛況

「WhyKumano」は世界遺産・熊野古道観光の拠点にもなる=和歌山県で

 「オンライン宿泊」は、新型コロナウイルスの感染拡大で宿が休業した後、家にいながらでも旅の気分を味わってもらいたいと始めた。定員は1日6人ほど。連日満室で、延べ約300人が体験した。1泊1000円で、実店舗で使えるワンドリンク付き。「再会し、オフラインで乾杯を」との思いがある。
 参加者は旅好きの人が多いが、子育てや妊娠中で旅行できない人も。「旅のハードルが高い人たちにもアプローチできた」と後呂さんは手応えを感じている。
 参加者が自分のスマホに保存している写真を画面で共有し、見せ合う。韓国の一風変わった図書館、タイでのトラとのツーショット、富士山をバックにしたキャンプ場での一こま…。旅の思い出やお薦めスポットで盛り上がった。

和歌山県那智勝浦町は海も近い=WhyKumano のYouTube 動画より

 午後10時すぎ、消灯時間を知らせる「蛍の光」が流れると、そろそろお開き。この日初めて知り合った人たちだが、後呂さんの慣れた進行もあり、あっという間に楽しい時間は過ぎた。結局、3時間近く話し、退室した時は1日旅行したみたいにぐったり。熊野を訪れたらここを巡って…と考えながら、眠りに落ちた。
 翌朝、参加者のスマホに動画が届き、熊野の日常の映像が流れる。これを見てチェックアウトだ。
 体験前、「さすがにオンラインで宿泊は無理があるだろう」と思っていたが、まるで異空間に旅立ったような感覚は新鮮だった。後呂さんはゲストハウス再開後も続けるという。旅の予習や同好の士との交流の場として、いいかもしれない。詳細は同館のフェイスブック、インスタグラムに掲載している。

◆神戸では南京町ツアー

中華街の「南京町」を撮影しながら案内する池端さん(手前)=ゲストハウス神戸なでしこ屋提供

 「オンライン宿泊」は、他のゲストハウスにも広がっている。神戸市中央区の「ゲストハウス神戸なでしこ屋」にも「宿泊」してみた。この宿は通常の夜の宿泊体験のほかに、日曜昼に南京町ツアーを開催した。
 会員制交流サイト(SNS)のインスタグラムのライブ配信機能を使い、オーナーの池端浩美さん(30)が、中華街の「南京町」を撮影しながら歩いて案内する。画面越しだが、ツアーに参加した気分になれる。
 南京町には、豚まんや小籠包(ショウロンポー)、焼きビーフンの有名店、土産物店などが並ぶ。コメント機能で参加者が質問もできる。においは感じないが、食欲をかき立てられた。
 ツアーは30分ほど。宿に帰り、館内を案内された後に「宿泊客」で早めの乾杯! 参加した観光業の女性(32)は「新しいコミュニケーションのかたち。忙しくて行けなかった人も、気軽に旅気分を味わえるのがいい」と満足げだった。今後も不定期で開催予定という。
 文・奥野斐
 ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へ。

関連キーワード


おすすめ情報