コロナ禍がカジノ整備計画を直撃 政府は推進の姿勢崩さず

2020年6月1日 07時02分
 新型コロナウイルスの感染拡大が、安倍政権によるカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の整備計画を直撃している。感染拡大で大幅減益となった米カジノ大手が日本進出を断念。誘致を表明した自治体も感染症対策に追われ、スケジュールに遅れが出始めている。だが、IRを成長戦略の目玉に位置付ける政権は推進の姿勢を崩していない。 (中根政人)

■撤退

 「今後、日本以外での成長機会に注力する」。米カジノ大手のラスベガス・サンズのアデルソン最高経営責任者(CEO)が五月十二日付の声明で日本進出からの撤退を表明すると、関係者に衝撃が広がった。
 サンズは横浜市が誘致を目指すIRの運営事業者の有力候補だった。アデルソン氏はトランプ米大統領の有力支持者。安倍晋三首相とトランプ氏の親しい関係を踏まえた「政治案件」(野党国会議員)として、サンズの日本進出は確実だとの見方もあった。
 背景には、カジノ業界が感染拡大で打撃を受けたことがある。サンズの今年第一・四半期の営業利益は、前年同期比で九割以上減。一兆円超とされる投資をして日本に進出するメリットはないと判断したもようだ。

■影響

 IR誘致を目指す自治体は、コロナ対策で手いっぱいだ。経済活動の停滞もあり準備に影響が出ている。
 大阪府・市では、米カジノ大手のMGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスの共同事業体が名乗りを上げているが、四月に予定していた事業者の提案書類の提出期限を三カ月延期した。二〇二五年の大阪・関西万博前の開業に間に合わない見通し。吉村洋文知事は「相乗効果が見込めなくなった」と認める。
 横浜市も、IR事業の要件を定める実施方針の公表を六月から二カ月延期した。林文子市長は「(政府への申請の)作業上はもうギリギリだ」と焦りを隠さない。長崎県は今夏ごろまでの募集要項公表が先送りされる可能性がある。和歌山県では、事業者公募に外資系二社が応募した。

■幻想

 政府は、誘致を目指す自治体が区域整備計画を申請する期間について、来年一〜七月とする現行案に変更はないとする。菅義偉(すがよしひで)官房長官は記者会見で、サンズの日本進出撤退へのコメントは避けながら「IR整備は観光立国を目指すわが国に不可欠なものだ」と強調。IR政策を担当する赤羽一嘉国土交通相も国会で「慎重に丁寧にやっていく」と語った。
 だが、計画の選定基準などを盛り込むIR基本方針の策定は遅れている。当初一月策定予定だったが、IR事業担当の副大臣だった秋元司衆院議員の逮捕で先送り。その後、三月末策定を模索したが、感染拡大の影響でずれ込んでいる。
 IR政策に詳しい静岡大の鳥畑与一教授(国際金融論)は「新型コロナウイルスで大規模な集客ができない状況が続けばIRの採算性は見込めず、政策の前提が崩れている。政府や自治体はIRによる経済成長という幻想と決別し、計画を撤回すべきだ」と話す。

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