鴎外荘77年の歴史に幕 「舞姫」執筆の旧邸保存へ寄付募る案も

2020年6月1日 07時42分

鴎外荘の思い出などを語る女将の中村みさ子さん=31日午後、東京都台東区で

 文豪・森鴎外(おうがい)(一八六二〜一九二二年)ゆかりの東京・上野の老舗旅館「水月ホテル鴎外荘」(台東区)は三十一日、営業最終日を迎えた。宿泊客を一日朝に送り出し、七十七年の歴史に幕を閉じる。女将(おかみ)の中村みさ子さん(63)は「やっと無事に終えられる」と安堵(あんど)。敷地内にある鴎外の旧邸をこの場所で残そうと、ネット上で寄付を募るクラウドファンディングなどを検討している。
 三十一日は旅館の全百二十四室が宿泊客で満室となった。日中も、二十代後半の鴎外が最初の妻登志子と新婚時代を過ごし、「舞姫」「於母影(おもかげ)」などを執筆した築百三十四年の旧邸や、都内第一号に認定された天然温泉を目当てに、多くの人が足を運んだ。友人と訪れた自営業永井美智子さん(64)=台東区=は「鴎外荘は地域にとって憩いの場所。料理も温泉も素晴らしかった」と残念がった。花束を持って訪れる客もいた。

森鴎外の旧邸の前で笑顔を見せる女将の中村みさ子さん

 中村さんは「最後にたくさんの方が来てくださり、うれしい」と笑顔。旧邸の移築には莫大(ばくだい)な費用がかかるため、現在の場所で残す方法を模索中。「六月から新たなスタートを切って、最大の使命を果たしたい」と前を向く。
 旅館は一九四三年、旧邸の隣に前身の「水月旅館」として創業。三年後、売りに出されていた旧邸を保存するため創業者が購入し、現在の名前に改めた。今年、新型コロナウイルスの影響で経営が悪化。旧邸を守るため、余力があるうちに閉館を決めた。(天田優里)

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