出所者を支援する協力雇用主がコロナで採用断念 「更生の道」険しく

2020年6月1日 07時39分

商品を並べるなど、ほそぼそと営業を続ける協力雇用主を担う女性の店舗=東京都内で

 刑務所からの出所者らを雇用し、生き直しを支援する「協力雇用主」制度が、揺らいでいる。新型コロナウイルスの影響で、雇用主となる企業の経営が悪化し、出所者の新規雇用を断らざるを得なくなっているからだ。出所後に職業に就かないと再犯率が高くなるとのデータがあり、法務省も危機感を抱いている。 (木原育子)
 「自分が生きていくだけで精いっぱいになりました。申し訳ない気持ちでいっぱい」。刑務所を出た人を積極的に雇用してきた、東京都内で食品小売店を営む女性(59)がつぶやいた。薬物違反や性犯罪は再犯率も高いため採用しない企業も多いが、詐欺罪で服役した人以外は受け入れてきた。
 コロナの感染拡大の影響で売り上げは85%減。四月に少年の矯正施設から出所予定だった男性(21)を受け入れる予定だったが、「今回ばかりは厳しい」と泣く泣く断った。何度も面会を重ね、ハローワークや刑務官の人たちと協議を重ね、「この子なら」と思っていた。
 従業員の給与支払いも滞るようになり、薬物事件で有罪判決を受けた二人も今春に退社した。「新たな職を見つけて生きてくれればいいが…」と言葉少なだ。
 女性は九年前に、百貨店などに売り場を設けて自社製品を販売する会社を起業。従業員五人程度の小さな会社だが、家庭的な雰囲気を大切にしてきた。
 女性自身、幼い時に養子に出されるなど複雑な家庭環境で育った。大学在学中に養父母も亡くなり天涯孤独に。卒業後は経営コンサルタント会社に就職し努力を積んできた。「寂しくても生きてこられたのは仕事があり、社会に評価してもらえたから。必死に変わろうと努力する彼ら彼女らは一緒に生きていく仲間。応援したかった」と話す。二年前から協力雇用主に登録し、更生支援に協力してきた。
 法務省によると、協力雇用主の企業は、従業員五〜二十九人の中小企業が50・2%と半数を超え、建設業やサービス業、製造業が八割を占める。コロナの影響で支援策が行き渡らず、女性のように雇用を見送るケースは増えているという。
 協力雇用主の制度は登録者数は多いものの、実際に雇う企業はまだ少なく、雇用先の確保が長年の課題だった。国は雇用先を二〇二〇年までに千五百社に増やす目標を設定し一九年十月に達成したばかりだった。
 再犯で刑務所に戻った人は一七年で一万一千四百六十一人で、このうち無職率は72・3%を占める。
 女性は、殺人罪で無期懲役刑の女性受刑者にも採用内定を出しており、仮釈放を待っている。「どうしても事業を継続して、迎え入れたい」と苦境を耐える。法務省の担当者も「気をもむ状況だが、協力雇用主に支援策を紹介するなど、できることをして流れを食い止めたい」と話す。

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