プロレス社長の言葉力

2020年6月1日 08時30分
 つらい時、悲しい時、前を向く力を与えてくれる自分の中の何物かを、「精神の背骨」と呼んでいる。私の背骨にはかなりの濃度でプロレスが含まれている。
 先日、新日本プロレスのハロルド・メイ社長がファンに向けて発信した動画を見た。団体はコロナ禍で多くの大会を中止している。
 動画では、選手やスタッフを感染リスクから守ることや企業の社会的責任を理由に、無観客でも試合を行わなかったと説明。グッズなどを買って経営を支えるファンに感謝を述べ、選手には長年蓄積したけがの治療の機会にしてほしいと呼び掛けた。
 「絶対に歴史を絶やすことなく十年後も二十年後もこの世に生き残りをかけて頑張ります。一緒に生きていきましょう」。単純だ、と笑われるかもしれないが、その言葉にほろっとした。その晩はよく寝られた。
 メイ社長はタカラトミーの社長なども務めた実業家だ。新日本プロレス社長に就任した直後、本紙夕刊の紙つぶての執筆依頼に伺ったことがある。「自分がどんな人間か知ってもらうため社員にも読んでほしい」と意欲的で、連載開始前にすでに数本の原稿が送られてきた。言葉の力を信じている人なのだと感じた。
 こういう非常時こそリーダーは言葉の力が問われる。棒読みしかできない人は残念だなあと思う。 (早川由紀美)

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