「スーチー政権、期待に応えず」と元同志 ミャンマー民主化道半ば

2020年6月2日 07時11分
 1988年のミャンマー民主化運動の元学生リーダーで、今年11月に予定される総選挙に新党「人民党」で臨む党首のコ・コ・ジー氏(58)が本紙の書面インタビューに答えた。コ・コ・ジー氏は、ともに運動の中心だったアウン・サン・スー・チー国家顧問=写真=率いる国民民主連盟(NLD)政権が国民の期待に応えていないと指摘。少数民族政党とも連携し、改革の遅れに不満を持つ層の受け皿になる意欲を示した。 (バンコク支局・北川成史)
 −新党設立の理由は。
 「八八年から三十二年たつが、民主化運動の目的は達成されていない。二〇一五年の前回総選挙で、NLDは私たち元学生活動家に立候補を打診しながら、説明もなく切り捨てた。スー・チー氏とはその後、行事に同席した際などを除き一度しか会っていない。独自の政党の結成が民主化の戦いを進める唯一の方法だ」
 −次回総選挙で他党との協力は。
 「少数民族政党と同盟を築き、国会や州議会などで百議席に候補を立てたい。同盟の構築は(一九四八年の独立後)内戦が続く国で極めて重要だ。少数民族に政治的方法で(自治拡大などの)目標達成が可能だと強い信念を持たせられる」
 −前回総選挙で政権を取ったNLDやスー・チー氏をどう評価するか。
 「国民の高い期待に応えていない。NLDの最優先事項は国内和平だったが、紛争は拡大している。国軍は政府の同意のもと攻撃を続けていると少数民族に思われてもおかしくない」

ミャンマーの最大都市ヤンゴンで2019年8月、人民党の事務所開設式典に出席したコ・コ・ジー氏=本人提供

 −NLDは今年、軍政期に制定された憲法の改正案を提出したが、国軍の影響力を弱める内容は軍人議員らの反対で否決された。
 「憲法改正はNLDの選挙公約だが、失敗とみなせるだろう。改憲には国会の75%超の賛成が必要で、軍人議員と国会外で交渉し、説得すべきだ。ただ、改憲ができなくても、教育や保健衛生に関する法改正など、過半数の賛成で改善できる分野がなおたくさんある」
 −イスラム教徒少数民族ロヒンギャの問題をどう解決するか。
 「わが国に二、三世代住みながら、市民権を手に入れていない人に、精査の上で権利を与える作業が急がれる。私たちは七十年にわたる内戦で、武力による解決策がよい結果を生まないという教訓を得ている」
<1988年民主化運動> 独裁政権下の88年3月以降、学生を中心にした反政府運動が力を増し、8月には全国的に拡大した。国家独立の英雄である故アウン・サン将軍の娘アウン・サン・スー・チー氏も加わって盛り上がりを見せたが、9月に国軍が運動を弾圧して軍事政権を樹立。多数が死傷したほか学生を率いたコ・コ・ジー氏らは投獄され、スー・チー氏も長く自宅軟禁となった。コ・コ・ジー氏は計19年以上の収監の末、民政移管翌年の2012年に釈放された。

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