無観客配信ライブ シャウト 「投げ銭」でライブハウス救え

2020年6月2日 08時53分

配信ライブで熱唱する聞間拓。 スタッフはカメラ3台の画面を切り替えながら配信した

 新型コロナウイルスは、ライブハウスにも大打撃を与えた。公演は壊滅状態となり、緊急事態宣言が解除されても本格稼働への道は険しい。そんな中、独立独歩で活動するインディーズのミュージシャンは、無観客の配信ライブに活路を見いだす。苦肉の策とはいえ、「こんな時だからこそ歌で元気に」「自分たちを認めてくれたライブハウスの力に」…それぞれの情熱を込めて、自宅や誰もいないステージからシャウトし続ける。 (藤浪繁雄、原田晋也)

セヌマヨシヒロ=いずれも東京・吉祥寺Planet Kで

 五月下旬、東京・吉祥寺のライブハウス「Planet K」。一九九九年オープンの有名店。二百人以上が入るスペースだが、この日はミュージシャンとスタッフら計八人ほどがスタンバイ。最前列にビデオカメラ三台を置き、ステージのミュージシャンを写してインターネットで配信。この夜は聞間拓(ききまたく)、タマキング、セヌマヨシヒロというアコースティックギターを携えた実力派が一人ずつ登場し、パワフルに競演した。

配信を受けた画面右側には、ファンからのメッセージや声援が続々寄せられた

 客はいなくとも、聞間は「声出していこうぜ!」とシャウト。すると、パソコンなどで見た人がチャット機能で呼応し、文字による“声援”が殺到した。観覧無料だが、ミュージシャンたちは「投げ銭」と称する支援金を呼び掛けた。画面から支援でき、趣旨はこの店舗の救済。賃料など固定費が月に数百万円かかるが、四月上旬から営業を中止しているため危機的状況が続く。ライブを企画したセヌマは「ここをつぶしたくない。声が続く限り配信ライブを続ける」と力強く語りかけた。
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タマキング=東京・吉祥寺Planet Kで

 長年、全国のライブハウスのステージに立っている聞間とタマキングは、これとは別にライブハウス支援のプロジェクトを立ち上げた。二人は三月上旬から、「タマタク」というユニットで全国ツアーを予定していたが、キャンセルが相次いだ。「密」の回避が難しいライブハウスに負のイメージが付きまとい悩んだが、「ライブに行きたい」「『家』(=ライブハウス)に帰りたい」というファンの声も多数届いた。

聞間拓とタマキングが中心となって展開している「またライブハウスで!!」プロジェクトのホームページ

プロジェクトのホームページ
https://www.tamataku.info/mata-livehouse-de-pj/
 奮起した二人は応援ソング「またライブハウスで」を手掛け、賛同するミュージシャン計三十二組と歌った。この楽曲の動画をYouTubeで公開し、投げ銭を募ると、半月余で約二百五十万円が寄せられた。支援対象は約百十店舗。二人は精力的に無観客ライブを配信し、協力を呼び掛ける。個人経営の小規模店舗には配信できる機材を持参し、経営者らにノウハウを伝授しながら歌っている。
 本格的な公演がいつからできるのか先が見えない。国が客数を収容人員の50%以下に抑えるなどの策を示すが、客が戻るのか不安は尽きない。ゆかりのライブハウスからは閉店の連絡も入ってくる。それでも二人はライブハウスのために歌い続ける。「僕らを育ててくれた店、『家』と思ってきた愛着のある場所でまたやりたいから」。必死に歌い支援を訴える。

◆インディーズ系の活路、糧に

 広がる無観客配信ライブ。大阪・東梅田AZYTATE(アジテイト)では五月、「わくわく配信サーキット!」と銘打った大規模ライブイベントを二回開催した。各回とも七十組以上のアーティストが自宅などから熱演した。見た人はお気に入りのミュージシャンに投げ銭できる仕組みだ。何千人もが観覧した。
 よっくん店長は「どこからでも参加でき、どこからでも見られるということだけ考えていた。思った以上にたくさんの人が“来場”し、出演者にも喜んでもらえた」と振り返る。
 今月も配信ライブを続けるが、あくまで臨時の手段。「多くの人たちが支えてくれているが、ライブの代わりになり得るにはまだまだと思う」と話す。「“生”ライブの魅力には勝てない。でも、こちらの判断で営業を始めて、お客さんや出演者に迷惑がかかってはいけないから」と苦しい胸中を明かす。

自宅で定期的に配信ライブを開いている山田尚史

 「わくわく−」に、神奈川県厚木市の自宅から出演した山田尚史(たかふみ)は、何年も前から配信ライブを開催している。優しく寄り添うような楽曲を多く手掛け、各地にファンがいるシンガー・ソングライターだ。
 手軽に発信できるとあって重要な発信手段だが、コロナ禍でネットにまん延したライブハウス文化への無理解、中傷に心が痛むという。「傷つき、疲れ果てた同業者も少なくない。終息しても文化的な荒廃が広がってしまうのかな…」と恐れも抱く。週一回ほどライブを有料配信、事前にチケットを購入してくれた人のために心を込めて弾き語りを披露している。
 ※山田は新譜「ぼくらは」に収録した楽曲「みんな人間」を自宅で弾き語り。その様子を収めた動画を視聴できます。

◆店舗売り上げ 9割以上減か

<NPO法人日本ライブハウス協会理事長で、横浜市中区のライブハウス「セブンスアベニュー」の椙江(すぎえ)茂起社長の話>
 店舗売り上げは軒並み前年度比9割以上減だろう。営業再開できても、6月も公演中止せざるを得ない状況だ。バンドはスタジオに集まって練習できないなどの問題があるし、飛沫(ひまつ)感染などの危険から、「ライブハウスには行かないように」と通達する会社や学校もあると聞く。これからの方が大変だ。協会への加盟は現状、30ほどの店舗だが、どんどん増えていて、年内に300ほどになりそうだ。協会としては、空気清浄機などを設置するための資金補助を国や自治体に訴えていく。

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