コロナで裁判が停止「給料なく時間が過ぎていく…」

2020年6月3日 07時06分
 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、解雇や賃金不払いなど生活が懸かった民事訴訟の審理が軒並みストップし、一日も早い解決を望む労働者側から悲鳴が上がっている。「自分の事件は不要不急なのか」。弁護士らは「感染防止対策を尽くしつつ、権利救済のための手続きを速やかに進めてほしい」と訴える。 (宇佐見昭彦)
 三十代男性の営業社員は二月末に解雇され、四月初めに地位保全と賃金仮払いの仮処分を横浜地裁に申し立てた。妊娠中の妻と幼児を抱えて収入が絶たれ、生活費が逼迫(ひっぱく)していたが、緊急事態宣言を理由に期日が大幅に遅れ、普段なら一、二週間以内に行われる第一回期日が入ったのは五月二十二日だった。
 代理人で神奈川労働弁護団事務局長の石渡豊正(いしわたほうせい)弁護士は「依頼者から電話で『生活ができない。何とかならないですか』と数回尋ねられた。裁判所は労働者の窮状が分かっているのだろうか」と嘆く。
 男性本人は取材に「仮処分はすぐ(期日が)入ると聞いていた。生活のベースだった給料が失われた中で時間が過ぎていく状況は、ストレスも強いものがあった」と話し、今月上旬にも出る地裁の決定を待つ。
 こうしたケースの多発に危機感を強めた日本労働弁護団は「期日を止めるな」と題したウェブ集会を五月下旬に開き、全国の弁護士ら約百八十人が参加した。
 集会では、憲法三二条(裁判を受ける権利)に基づく迅速・適切な手続きを強く求め、特に迅速さが必要な労働審判の休止で「紛争が解決せず生活の糧が得られないなど、労働者の生活が根幹から脅かされている」とした集会アピールを発表。仕切り板の設置やテレビ会議システムなどの利用による感染防止対策と、裁判進行の両立を訴えた。
 アピール文をまとめた水野英樹弁護士は「緊急事態宣言が解除されても、例えば通常一日十件やっていた裁判を二十件できるようになるわけではない。一カ月半も止まった遅れはなかなか取り戻せない」と話す。
 労働弁護団のアンケート調査では、回答した全国百二人の弁護士のうち95%がコロナの影響で担当事件の期日延期を経験。一人で二十件以上も期日延期に遭った弁護士もいた。
 東京地裁では緊急事態宣言が出てから五月末まで、緊急性の高い保全事件など一部の例外を除き、期日取り消しが続いた。地裁の広報担当者は「都の外出自粛要請も踏まえた。一律に全く開かないわけではなく、緊急性が高いかどうかは各裁判官の判断。開く場合は広い法廷や部屋を使い、傍聴席数を減らすなど、できる範囲の工夫はしている」と話している。

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