特別障害者手当 低い認知度 「在宅」の重度要介護なら受給の可能性  

2020年6月3日 08時23分
 重い要介護状態でも自宅で過ごしたいと願う高齢者は少なくない。ただ多くの医療・介護サービスを使うため費用もかさむ。そんな時、障害者福祉の制度「特別障害者手当」が味方になってくれるかもしれない。寝たきり状態の人ならば受給できる可能性がある。しかし、「高齢者」「障害者」と縦割りの福祉制度の中で、手当の存在は埋もれてしまっている。 (五十住和樹)
 特別障害者手当は重度障害者の所得保障として一九八六年にでき、寝たきりなどで、常時介護を必要とする在宅の二十歳以上の人が対象。申請した上で、要件を満たしていれば、月額二万七千三百五十円が支給される=表。
 厚生労働省のまとめでは一月末現在の受給者数は十二万四千五百二十四人。ここ数年は、ほぼ横ばいだ。
 「重度の人の在宅介護は経済的にも過酷。この手当を知っていたら、どんなに助かったかと思います」。東京都内に住む女性(57)は、二〇一七年八月に八十八歳で亡くなった父親の介護費用を振り返った。
 腎臓病と認知症を患っていた父親は、一五年九月に転倒してけがをし二カ月入院。退院後の療養で介護保険の入所施設で医療的ケアの手厚い「療養病床」を利用すると、月に約二十万円かかることが分かり、女性が在宅で介護していた。
 介助なしでは身の回りのことができない父親は翌年、最重度の要介護5に。介護保険では訪問看護などが使える「看護小規模多機能型居宅介護」を利用し、ほかに医療保険で訪問診療や訪問歯科などを受けた。
 所得に応じて決まる介護保険サービスの利用者負担(一〜三割)は男性の場合、二割。こうした医療・介護費用に、腎臓病食、おむつ、布団の洗濯代などを加えた自己負担は月約十八万円に上った。
 一カ月の介護費用が一定額以上の高額になった場合に払い戻しを受けられる「高額介護サービス費」制度を利用し、約五万円が返ってきた。それでも家計は苦しく、食費を切り詰め、国民年金保険料の免除申請もした。特別障害者手当のことは誰からも教えてもらえなかったという。
 「高齢者介護の関係者は障害者福祉にうとい。手当を知っているケアマネジャーに会ったことがない」。東京・多摩地区で認知症の人の相談にのったり、ケアマネの講師を務めたりする女性(53)は言う。三年前、若年性認知症の五十代男性の家族に手当を紹介。一家の大黒柱が病で職を失う中、妻は「経済的な支えになった」と話したという。
 岐阜県土岐市の医療法人理事長で、ファイナンシャルプランナーの資格も持つ認知症専門医の長谷川嘉哉(よしや)さん(54)も手当は「最も受給漏れが多い制度」と話す。年数回、受給につなげるという長谷川さんは「要介護5か4で、日常生活動作のすべてに介護が必要な寝たきりの高齢者は該当する可能性がある」と話す。
 これら、「手当の利用が増えないのは認知度が低いから」との指摘に対し、厚労省の担当者は「重い障害が重複している在宅の障害者は、限られているからでは」と話す。
 利用するには「在宅」が条件だが、介護保険制度の施設(特別養護老人ホームなど)以外なら、グループホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)にいる人も対象。申請は、医師に所定の診断書に記入してもらい、必要書類とともに住所地の区市町村窓口に提出する。所得制限など支給要件がある。手続きの詳細は、窓口で尋ねる。
 ただ、「人生100年時代の医療・介護サバイバル」(築地書館)の著者で、ノンフィクションライター中沢まゆみさん(71)は「申請では医師の診断書がネックとなる」と指摘。高齢者の主治医は障害者の制度に詳しくない人も少なくないという。長谷川さんは「脳血管障害や認知症、在宅診療に詳しい医師に依頼してほしい」とアドバイスする。

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