静まりかえる街『声なき悲鳴』を取材する 編集局経済部 池尾伸一

2020年6月10日 19時07分

「断腸の思いですが、休業します」。
シャッターの閉まった居酒屋の張り紙に店主の悔しさがにじみます。
新型コロナ感染拡大に伴い知事からの要請で大半の店が閉店。
ひっそり静まり返った東京の街に、仕事を奪われた人々の「声なき悲鳴」が響いているようでした。
強制的に人々を休ませながら、その間の生活資金をどうするのか、政府の動きは鈍い。
このままでは失業したり自死に追い込まれたりする人が増えるのでは。
シャッターの向こう側で苦しむ人々の状況を伝えねばと思いました。
昨年から連載してきた「働き方改革の死角」の取材経験から
非正規社員や個人事業主など立場の弱い人たちほど、置き去りにされるのが予想されました。
制約もたくさんありました。
感染拡大防止のため記者もテレワーク(在宅勤務)が求められ
記者の基本のはずの「直接会っての取材」ができないのです。
アパートに巣ごもりしながら、相談窓口を開設している労働組合などに電話しまくり
相談者を紹介してもらいました。
SNSでつぶやいている人たちにも、取材を申し込みました。
識者へのインタビューは、お互い顔を見ながら話せる「Zoom」です。
「勤め先から休業手当が全くもらえない」(アルバイト)、「収入が3分の1になり暮らせない」(フリー音楽家)など
窮状の一端が報道でき、本紙の記事を機に休業手当支給を決めた企業もありました。
こうした状況下でも働く宅配要員、スーパー店員などの話も聞きました。
「エッセンシャルワーカー」(不可欠な労働者)と言われる存在ですが
「経営者が3密を改善してくれない」など苦しんでいます。
ところで新聞記者は「エッセンシャルワーカー」なのでしょうか?
コロナ禍が終息した頃、読者が決めてくれるのだと思います。
※執筆記者の所属は2020年5月28日時点のものです。

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