<新型コロナ>感染者の遺体運ぶ葬儀業者 防護服など支援を 32社、県に要望書

2020年6月4日 07時31分

新型コロナ感染者の遺体を運ぶ際の装備と納体袋。撮影用で一部省略している=さいたま市浦和区のセレモニー浦和ホールで

 新型コロナウイルスの感染者が亡くなった時、遺体の搬送を担うのは葬儀業者だ。業務に当たる従業員は感染リスクを避けるため、医療用マスクや防護服などの装備が欠かせないが、確保が難しくなっている。搬送を断らざるを得なくなった業者もいて、業界は支援を訴えている。(寺本康弘)
 「(感染者の)ご遺体をお迎えに行く時は、自分が感染しないか緊張します」。県内外に二十四の式場を展開する「セレモニー」(さいたま市浦和区)の男性社員は、心境を打ち明けた。
 依頼を受けると、感染者が亡くなった病院と事前に打ち合わせをした上で、二人一組で車で向かう。二人とも、医療用のN95マスクと防護服、ゴーグル、フェースシールド、二重のゴム手袋、長靴などフル装備だ。
 遺体は通常、病院の個室でウイルスを通さない防水シートの納体袋に入れられて待っている。しかし、病院によっては袋が無かったり、医療従事者の手が空かなかったりするため、葬儀業者が袋を持参し遺体を収める作業を引き受けることもある。
 遺体の入った納体袋は消毒後、ひつぎに納め、さらに消毒。そこまで徹底することで遺体からの感染リスクはほとんどなくなり、遺族が望めば、病院から火葬場に直送せず葬儀ができるようになる。
 遺体を式場まで運んだ後、従業員はようやく装備を解ける。ウイルスが付着している可能性を考え、互いに消毒しながら慎重に防護服などを脱いでいく。最も神経を使う瞬間だ。外した装備は長靴以外、一度使ったら処分する。装備を身に着けてから外すまで早くても四時間はかかり、体力的な負担は大きい。
 家族から「出社しないで」「大丈夫なの」と心配されるが、「どこかの業者がやらなければ病院も患者が受け入れられなくなり、治療もストップしてしまう」と男性社員。「使命感で業務に当たっている」と明かす。
 安全のために欠かせない装備だが、医療機関でも不足している状況で、業者の中には、手に入れられず遺体搬送業務の依頼を断らざるを得なかったり、装備がないために病院から断られたりするケースが出てきた。同社を含む県内の三十二社は先月、県にマスクや防護服などの安定供給を求める要望書を提出した。
 志賀司社長(55)は「医療機関への物資の提供は当然だが、われわれも装備が無いと動けず、みんなが困ることになる。そろえられるよう支援してほしい」と話している。
 県は「一般用マスクと消毒液は届けたが、防護服やN95マスクの提供は現状では難しい」と話している。

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