村上春樹、森見登美彦らの挿絵で活躍 フジモトマサル追悼集刊行

2020年6月4日 13時57分
 小説の挿絵などで活躍したイラストレーター、フジモトマサルさん(一九六八〜二〇一五年)の没後五年に合わせ、追悼集『フジモトマサルの仕事』=写真=を平凡社が刊行した。村上春樹さんほか、ともに仕事をした複数の作家が寄稿し、故人との縁を振り返っている。味わい深い作品世界とともに、おしゃれで理知的だった人柄が浮かび上がる。
 フジモトさんは、大阪府生まれ。二足歩行をして街で暮らす、擬人化した動物たちの絵を得意とした。一九九〇年代前半からフリーのイラストレーターとして活動。回文と絵を組み合わせた物語『ダンスがすんだ』や、会社で働くヒツジが主人公の漫画『ウール100%』などの著作がある。かわいらしくユーモラスでありながら、どこか影を感じさせる作風が人気を集め、小説の挿絵も数多く手がけた。慢性骨髄性白血病で四十六歳で死去した。
 追悼集は、漫画、挿絵、本の装丁など、仕事のジャンルごとに、初期から晩年までの作品を見せる。親交があった作家たちによるエッセーのほか、生前に受けたインタビューなども再録した。

フジモトマサルさんのイラスト

 村上春樹さんとの仕事は二〇一五年。インターネット上で読者から届いた質問に応える企画『村上さんのところ』で、フジモトさんが絵を担当した。書籍化の際は、漫画を追加。最期に近い病床での仕事となった。
 村上さんは、寄稿で<おつきあいは、残念ながらとても短いものに終わった>とした上で、挿絵を依頼した経緯などを紹介。フジモトさんの絵に<きりっとした個性>があり、自身の文章と<うまく水が合って>いた、と別れを惜しむ。
 新聞連載だった小説『聖なる怠け者の冒険』で、フジモトさんと組んだのは、森見登美彦さん。出来上がった挿絵を見てイメージをふくらませ、物語の続きを書く、というやり方で、作品世界を広げていったという。<そこまで濃密な共同作業はあとにも先にも一度もない>と振り返る。
 平凡社で編集を担当した林理映子さんは「フジモトさんのイラストは、ほっとする部分と、ちょっと怖いような部分のバランスが絶妙で、背景にある物語に想像が及ぶ。稀有(けう)な作家の存在を読者の記憶にとどめたい」と話している。百二十八ページ。千九百八十円。  (中村陽子)

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