「無責任な追い出し」新宿区、ネットカフェ難民にホテル延長可能と伝えず

2020年6月5日 07時21分
 新型コロナウイルスの影響でインターネットカフェなどが休業し、居場所を失った人に東京都がビジネスホテルを提供している救済事業で、新宿区がホテル利用者に滞在期間を延長できることを伝えず、五月末に退出させていたことが分かった。支援団体は「生活困窮者を無責任に追い出した」と批判している。 (中村真暁)
 区によると、区にホテルの利用を申し込んだのは五月末で百七十二人。このうち七十四人は生活保護の利用が決まったが、残る九十八人は公的支援につながらず、ホテル退出後の行き先は不明だった。区は相談を呼びかける文書を利用者の部屋に配ったが、連絡が取れなかった。
 区は五月二十九日、この九十八人に「ホテル利用は三十一日(チェックアウト六月一日朝)まで。生活の相談をしたい方は福祉事務所にご相談ください」などと記した文書を配布。実際はこの時点で、都はホテルの利用を六月七日まで延長していたが、文書に記していなかった。
 九十八人の利用者は六月一日までにホテルを退出。その後、九人は福祉事務所に来てホテルに入り直したが、八十九人の行方は分からない。
 区の担当者は「ホテル利用中に次の行き先を決めることが大切なので、当初の期限でチェックアウトしてもらった。本当に困っている人は退出後に福祉事務所に来ると考えた」と説明。また、ホテルの利用延長を知らせる都の通知は「次の居場所の確保が困難な人に限る」という趣旨のため、利用者に文書で伝えなかったとし、「(対象者は)全ての人ではない。仕事や手持ちのお金があり、自力で行き先を確保した人もいると思う」と話した。
 都の担当者は区の対応について「利用者本人と接触できずに追い出すのは乱暴と思うが、運用は各自治体が担う。(都側が)結果的には押し切られた」と説明する。
 新宿区で炊き出しや相談支援をしている認定NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」の大西連理事長は「収入や所持金も把握しないまま、結果的に追い出している。責任を持って次の段階まで伴走すべきだった。ネットカフェや路上で過ごしている人もいるかもしれない」と指摘している。
 都は四月十一日から居場所がない人へのホテルの提供を開始。当初は期限を五月六日までとしたが、その後何度も延長し、現在は今月十四日まで宿泊できる。
 都内全域では五月三十一日現在で、区市の窓口を通じて五百五十二人、都を通じて五百二十人がホテルを利用している。
◇新宿区のホテル退出を巡る経緯
4月 7日 政府が7都府県に緊急事態宣言
  10日 東京都がネットカフェなどに休業要請
  11日 居場所がなくなった人に都がホテルの提供開始
5月22日 都が利用期限を5月31日から6月7日に延長
  29日 新宿区がホテル利用者に「ホテル利用は31日(チェックアウト6月1日)まで」と文書配布。6月7日までの延長に触れず
6月 1日 ホテル利用者が退出

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