巨人・坂本の「微陽性」って何? 感染症学者「初めて聞いた」

2020年6月5日 07時36分
 プロ野球巨人は三日、坂本勇人内野手と大城卓三捕手が新型コロナウイルスのPCR検査で陽性反応が出たと発表した。気になったのはその説明の中で使われた「微陽性」という言葉。感染の有無を示すのは「陽性」「陰性」の二つのはずで、今までにない言葉だ。一体、どういう状態を指すのか。 (稲垣太郎)
 「彼らもまったく無症状で、昨日も試合に出るくらい元気だ。われわれも驚いている」。巨人の今村司球団社長は三日の記者会見で二人の陽性反応についてそう話した。
 巨人が同日にホームページに出した「選手2名のPCR検査結果について」と題した「ニュース」によると全選手や監督、コーチ、チームスタッフら総勢約二百二十人のうち希望者全員に、都内の大学医学部の研究に参加する形で新型コロナの感染歴を調べる抗体検査を実施。うち選手やスタッフ計四人から、感染後に回復したことを示す抗体が確認され、PCR検査をしたところ、二選手が陽性と判定されたという。
 ともに新型コロナウイルスの遺伝子量が微量で、正常値ぎりぎりだったことを説明する際に「『微陽性』にあたる」とした。坂本、大城両選手は三日にPCR検査を受け四日に陰性と判明。濃厚接触者とされる二十六人も検査を受けたが陰性だった。
 長崎大の安田二朗感染症共同研究拠点教授(ウイルス学)に「微陽性」について尋ねると「公式に使われたことはないと思う。専門用語でもない」とやや驚いた様子。「多分、ウイルス量が少なくて、人にうつす可能性は低いと言いたいのだろうが、あいまいな表現だ。使い方によっては誤解が生じる可能性があるかもしれない」と指摘し、「陽性だったけど、検出されたウイルス量は極めて少なかった、というのが科学的な正しい表現だ」とした。
 国際医療福祉大の高橋和郎教授(感染症)も「初めて聞いた。学会や専門家の間でも使われていない。新たに使うなら、きちんと定義しないと分かりにくいし、伝わらない」という。
 では、なぜ巨人はわざわざ「微陽性」という言葉を使ったのか。
 スポーツライターの小林信也氏は「陽性という言葉だけでは、十九日のプロ野球開幕は無理という話になっていく恐れがあり、それをものすごく警戒した結果、『微陽性』という言葉を使ったのでは」と推測した上で、「二選手に陽性反応が出たという衝撃を、どうやって少なくするかに苦慮したと思うが、『微陽性』という言葉が医学的に正しくないとしたらおかしな話だ」と話す。
 巨人だけでなく他球団もPCR検査を選手やスタッフに受けさせる動きは広まっている。ただ、東京都内だけでも新型コロナ感染に関する相談は三日現在千三百五十件に上るが、同日の検査人数は百六十六人。プロ野球選手なら無症状で微陽性というレベルの感染でもすぐに検査を受けられるのに、一般人にはいぜん検査のハードルが高いというのは不公平感が残る。
 山梨大医学部付属病院の感染対策に取り組んできた島田真路同大学長は「海外と比べ日本は検査数が断トツに少ない。検査して陽性者が増えれば医療崩壊につながると政府や一部の専門家が訴えてきたからだが、早く多く検査して陽性者を割り出し、隔離するのが感染拡大を防ぐポイントだ」と指摘。その上で「唾液を検体に使うPCR検査ができるようになった。これなら医師らの負担を軽減でき、医療崩壊を招かない。だれでも検査を受けられるよう国は態勢を整備するべきだ」と話した。

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