<はじめての和の道>記者体験ルポ 日舞エクササイズ「NOSS」 しなやかな動き 心地よい

2020年6月5日 09時03分

リモートで指導を受ける(左から)藤原記者、神野記者。「雪受け」の手本を見せる純矢ちとせさん(右端)=東京都中央区で

 しなやかで美しい日本舞踊の所作にスポーツ科学を取り入れたエクササイズ「NOSS(ノス)」。十五年ほど前から西川流(名古屋市)が提唱し、ゆったりとした動きでも全身にじんわり効くと評判だ。コロナ禍での自粛生活で運動不足気味の記者が西川千雅(かずまさ)四世家元(51)にお願いし、名古屋と東京をつないだ「リモート講習」で伝授してもらった。 (藤原哲也)

NOSSを創案した西川流の西川右近総師


 和服ではなく、普段着でもOKとのことで、リラックスした気持ちで家元が映るパソコンの前に立った。「NOSS」を創案した右近総師(81)=三世家元=も名古屋から見守る。東京の稽古場では、元宝塚歌劇団娘役スターでNOSSの広報アンバサダーを務める純矢(じゅんや)ちとせさん(35)がサポート役で参加。まずは純矢さんの動きに合わせ、準備体操代わりに腰を落としたり、一本ずつ指を動かしたりして基本の動きを学ぶが、体が硬いせいかとにかくぎこちない。
 「苦手と思っていた方が脳トレにもなるし、鍛錬になる」と家元。全身の動きが頭の中で整理できずパニックになりかけたが、正座のタイミングで心を落ち着かせる。ワイシャツにはうっすら汗が…。ここから先が本格的な動きだ。
 腰を落とし、片手を前に伸ばしながら招くように体を回す。これが「案内」というポーズ。肩甲骨から腰周りがピッと伸びる感覚だ。両腕を胸に当てる「乙女」のポーズを挟み、今度は上から降ってくる雪を片手ずつ手のひらで受けるイメージで体を伸ばす。これが「雪受け」。体をひねって上下動するため、ゆっくりでも足腰に効いてくる。

名古屋からリモート指導する、西川千雅家元

 だが、左右の動きはバラバラで何度もバランスを崩し棒立ちになってしまう。体の軸が動かない純矢さんとは大違い。それでも家元は「全然おかしくない。日本舞踊は昔の日本人の日常動作。慣れたらバランスも良くなる」と画面越しに励ましてくれた。
 その後は、手のひらで木の葉が落ちてくる様子を表す「木の葉」、片手を上げながら左右に回る「風よけ」などを体験。風よけは腰を沈めて回るため、下半身全体が張るだけでなく、上半身も脇腹が伸びる感じで全身が心地よい。
 最終的に全二十通りの動きとポーズを体験。エクササイズとはいえ、日舞の魅力にも触れられた気がした。最後にNOSSの魅力を画面の向こう側に問い掛けると、「やはり元が日本の動きなので、白いご飯みたいなもの。かめばかむほど味わいが出る。最初はTシャツ一枚で何となくまねしてもらえたら」。日本文化の学びと運動が楽しめる一挙両得の時間だった。

◆筋力、柔軟性など養う 優雅な和の所作

「小鳥跳び」の動きは足腰の鍛錬にも有効

 「NOSS(ノス)」は「にほん・おどり・スポーツ・サイエンス」の略で、日本舞踊の動作で構成される運動プログラムだ。西川流の西川右近総師が心筋梗塞で入院した後のリハビリをきっかけに、スポーツ科学の専門家らと合同で研究して創案された。
 日本舞踊スポーツ科学協会によると、六分四十五秒の選定曲の中で、現代人に必要な三大運動である有酸素運動、筋力トレーニング、ストレッチをバランス良く取り入れている。ふわふわと飛ぶような動きの「小鳥跳び」は足首を柔らかくして転倒予防につながるほか、「風よけ」では骨盤周りの筋肉をほぐすことなどで腰痛改善にも効果があるという。
 和の所作で優雅な動きが身に付くため、日舞体験にもなる。同協会はこれまで約八百人のインストラクターを輩出しているが、新型コロナウイルスの影響で通常の教室運営が難しいため、今後は在宅で学べるオンライン講習の支援に力を入れていく方針だ。

「風よけ」のポーズ。純矢ちとせさんのお手本は、しなやかで華麗だ

 今回サポートしてくれた純矢ちとせさんは「実際やっていると足腰が鍛えられる実感がある。『和の心』の導入のきっかけとして、ぜひお薦めしたい」とPR。右近総師は「あまり人に会えない今こそ、一人で練習できるチャンス。人に見せた時の喜びを想像して励みにしてほしい」と話している。 (藤原哲也)

◆70代記者「ほっ、正座ができた」

 外出自粛で歩かなくなり、気が付けばつまずきやすくなっていた。シルバー世代は転倒禁物! そこで、70代の記者もNOSSに挑戦した。
 正座から始まる日本舞踊。「30秒座って」と言われ、恐る恐る腰を下ろす。座れたじゃない! 痛くもない。たるんだ太ももの筋肉が鍛えられる感じがした。「正座できるのは体が使える証拠」とお墨付きをもらい、前向きな気持ちで動きに入れた。
 日舞には欠かせない手のしぐさ。両手の指を開いて、閉じて、パラパラパラッ。無骨な指は思うように動かない。指と脳は密接に関係し、しなやかな指の人は脳もしなやかだという。脳の老化度チェックにもなるそうで私は要訓練だ。
 「乙女」のポーズは気恥ずかしいが、首を傾けてニッコリ。年を忘れさせるポーズもあるのが心憎い。
 普段使わない筋肉を目いっぱい刺激していい汗をかいた。一度で終わらせてはいけないと誓った。 (ライター・神野栄子)

◆今日の先生



<西川千雅> 1969年生まれ。名古屋市出身。父は三世家元の西川右近。6歳で初舞台を踏み、15歳で名取となる。日本舞踊家としての活動のほか、舞台やドラマへの出演、各種プロデュースを行う。2014年に西川流四世家元を継承。17年に設立された日本舞踊スポーツ科学協会(NOSS協会)では理事を務め、幅広い年代で健康増進に役立つNOSSの普及に取り組んでいる。
※日本舞踊スポーツ科学協会(http://noss.jp)

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