新規国債90兆円 「日銀頼み」の危うい構造

2020年6月6日 07時01分
 政府が二〇二〇年度に発行する新規国債は過去最大の計九十兆円超に達し、日銀は市場を通じて大量に購入、円滑な消化を支える見込みだ。日銀が「異次元の金融緩和」でアベノミクスを支えた当初からの危うい構造は深まるばかり。平時に異例の国債買い入れを続けたツケが回り、コロナ危機をきっかけに通貨の信認が揺らぐ懸念がつきまとう。 (渥美龍太)

◆禁じ手

 消費の落ち込みは過去最大−。総務省が五日発表した四月の家計調査は、二人以上世帯の消費支出が前年比一割超も減り、コロナ危機の深刻さを見せつけた。
 景気の下支えが急務となる中、五月下旬に財務省と日銀のトップが共同で取り組む姿勢をアピールする会見があった。そこで注目されたのが、日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁による「政府が国債を増発させても長期金利が上がらないようにする」との発言だった。政府が国債を発行しやすいよう日銀が助ける姿勢を明示した形だ。
 伏線は約一カ月前。日銀は国債買い入れの制限撤廃を決め、公表文には「政府の緊急経済対策で国債発行が増加する影響を踏まえ、さらに積極的な買い入れを行う」と明記した。
 黒田総裁のもとで審議委員を務めた野村総研の木内登英(たかひで)氏は「(政府の借金を肩代わりする)事実上の財政ファイナンスの色彩がさらに強まった」と指摘する。

◆突出

 世界各国でもコロナ対策で政府が国債を大量に発行し、中央銀行が買い支える動きが広がる。だが日銀は世界景気が好調な七年間、アベノミクスに基づき国債を大量に買い続けていた。
 ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏によると、欧米の中銀は買い入れた国債などの総資産額が直近で増えているものの、国内総生産(GDP)の30〜50%程度の水準にとどまる。これに対し、日銀はGDPを大きく上回り120%に迫る。
 日本総研の河村小百合氏は「日銀の買い方は異常で損失が出やすく、財政規律も緩んだ。通貨の信認に影響すれば過度なインフレなどで国民負担につながる」と警鐘を鳴らす。

◆危うさ

 企業の倒産や失業が急増しかねない危機は続いており、政府が給付金などで人々の生活を支えるのは急務だ。与野党からも日銀の買い支え継続に期待する意見が相次ぐ。
 ただ、実際に国債を売買する投資家は、国債が「打ち出の小づち」のような扱いを受けていることに違和感を持つ。「私たちがほとんど利子もつかない国債を買うのは、結局は日銀に転売して利ざやを稼げるから」(証券会社)という実態があるからだ。当事者だからこそ「日銀頼み」の異常さを痛感している。
 世界の中央銀行に詳しい東短リサーチの加藤出氏は「中銀が国債を買うから経済対策の費用は大丈夫、という議論が堂々とまかり通っている国は日本だけ」と説明。「必要な対策は進めつつ、国債処理の検討も始めるべきだ」と話す。

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