コロナに打つ手なく…無念の決断 「あきらめ倒産」が増えている

2020年6月6日 07時07分

昨年と比べて予定が真っ白になった小林さんの手帳。左上は自社で手掛けた福祉の専門書=東京都内で(嶋村光希子撮影)

 新型コロナウイルスによる経済の打撃で、もともと苦しい経営を続けてきた企業トップが倒産へと決断を迫られるケースが増えている。慢性的な経営難にコロナの打撃が加わり、「あきらめ倒産」と呼ばれる企業が急増する恐れは高まっている。福祉関連の専門書の販売と出版を手がけてきた「小林出版」(東京都渋谷区)は、本を売るイベントの中止や学校の休校で売り上げが急減し、倒産した。 (嶋村光希子)
 「大切に育ててきた会社で無念。でもコロナに手を打てることはなく、どうしようもなかった」
 小林出版を経営していた小林直哉さん(52)が声を落とした。父親が立ち上げた出版社を二〇〇〇年に引き継いだ。一度は業績不振で会社をたたみ同業他社で働いたが、そこも経営危機に。再起をかけ、一七年に小林出版を設立した。福祉、医療関連の学会や研修会の会場で、ブースを出して専門書を販売。福祉系の大学や専門学校で使う教科書の出版も手がけた。
 コスト削減のため、従業員は雇わなかった。一年の半分以上、販売のために各地へ出張し、「きめ細かく正直な接客を心掛けてきた」。しかし、ネット上の中古書販売や学生の減少の影響で、一八年に二千五百万円あった売り上げは右肩下がりとなっていた。
 業績が思わしくない中、コロナ禍に見舞われた。大人数の集会の自粛要請で、二月中旬からの出展販売の予定が全て白紙に。福祉系の教科書も学校の休校で、販売のめどが立たなくなった。これまでの業績不振で新たな借り入れは難しく手元の現金も底をついた。三月二十四日に東京地裁から破産開始決定を受けた。負債は約千六百万円だった。
 売り上げが急減した中小企業らに支給される「持続化給付金」の政府決定の前に破産した。「政府の対応は遅く、国の支援は十分とも言えない。ただ、仮に数十万円をもらっていても、その先が見えず事業は続けられなかった」と話した。
 帝国データバンクによると、新型コロナ関連の倒産は五日現在、二百二十二件で、今後も増加が見込まれる。苦境にある経営者に対し、小林さんは「コロナは誰のせいでもない。自分を責めず、手遅れにならないように周りに相談してほしい」と呼び掛けた。

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