藤井聡太七段 コロナ禍の中の快挙

2020年6月6日 07時08分
 将棋の最年少プロ棋士、藤井聡太七段がまた一つ、重要な記録を塗り替えた。「最年少でのタイトル挑戦」。コロナ禍で対局が休止となっても集中力を失わず、実力で成し遂げた快挙といえよう。
 一度は消えたはずの大記録だ。従来の最年少は屋敷伸之九段(48)が一九八九年に達成した「十七歳十カ月二十四日」だった。十七歳の藤井七段は、タイトル戦の一つ「棋聖戦」で三月、挑戦者を決定する決勝トーナメントの準決勝に進出し三十一年ぶりの記録更新まであと二勝としていた。
 しかしコロナ禍による緊急事態宣言を受けて、日本将棋連盟では四月十一日から百キロ以上の移動を伴う対局を休止。対局の大半は、東京と大阪の将棋会館で行われるため、愛知県在住の藤井七段には対局の機会がなくなった。
 だが、宣言の解除に伴う連盟や関係者の対応は果断だった。
 棋聖位を持つ渡辺明三冠(36)と挑戦者の五番勝負は、例年並みの六月八日に開幕と決定。準決勝と決勝、五番勝負の第一局の計三局を、六月二日からわずか一週間で行う異例の日程としたのだ。
 対局の休止が長引けば、実現は不可能だった新記録。それを八日の時点で「十七歳十カ月二十日」とわずか四日ながら更新する理由の一つは、こうした運営上の隠れたファインプレーにもある。
 とはいえやはり、この新記録は藤井七段の実力のたまものだ。
 対局の休止期間は五十日あまりに及んだ。史上最年少のプロ入り(十四歳二カ月)を果たすなど、数々の記録を打ち立てる天才は、記録より「まず実力を高めることを優先したい」と語るが、実力の向上に大切な実戦は延期となり、記録更新もコロナ禍で消えるのはやはり残念ではなかったか。
 だがそれに気落ちせず、いつになるか分からない対局再開に備えしっかり力を蓄えていた。トーナメントの準決勝は、元名人の佐藤天彦九段(32)と対戦。決勝は叡王と王座を持つ永瀬拓矢二冠(27)。こうした難敵を厳しい日程の中で相次いで倒す強さと、対局の休止という異常な事態にも動じない、その集中力に拍手を送りたい。
 この夏は高校野球や高校総体、文化系のコンクールなど、多くの大会が中止され、目標を見失った高校生も多いだろう。そうした人たちにとっても、逆境にも負けずタイトルへの挑戦を現実のものとした同じ高校生の棋士の活躍は、励みになるのではないだろうか。

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