暫定配備、乏しい地元の議論<浮遊の果てに/陸自オスプレイ木更津へ>(上)

2020年6月7日 08時10分

山口県岩国市の米軍岩国基地に到着した輸送機オスプレイ=5月8日(米軍提供)

 暫定配備は本当に五年の期限内で終わるのか-。
 千葉県木更津市の三月議会で、六月末~七月上旬に迫っていた垂直離着陸輸送機「オスプレイ」の陸上自衛隊木更津駐屯地配備に関する質問が相次いだ。
 「防衛省において対処すべきだ」。山口芳一企画部長は歯切れの悪い答弁に終始した。
 さらなる議論の機会を、感染拡大する新型コロナウイルスが奪う。市議会は六月定例会で一般質問を中止すると決めた。コロナ対応に追われる市職員の負担軽減が理由だ。
 六月議会は、防衛省と地元側が騒音など懸案事項について話し合う協議会の設置が主要議題の一つになることが予想されていた。「議会は不要と言っているのに等しい」と、高橋てる子議員(無所属)は憤る。
 とはいえ、街を見渡すと、配備への懸念や反対の声は多くはない。オスプレイが飛来するだけで各地で反対運動が起こるのとは対照的に、五年間、最大十七機の配備を目前に控えた木更津は驚くほど静かだ。
 暫定配備が持ち上がって以来、渡辺芳邦市長は「国の防衛政策には基本的に協力する立場」と繰り返してきた。
 木更津には戦前から旧海軍の基地があり、陸自の駐屯地に変わった後も、ともに歩んできた歴史がある。自衛隊に対する市民感情は好意的だ。反対の声が高まらない背景にはこうした歴史に加え、背に腹は代えられない現実もある。

◆衰退する街に補助金、国と蜜月求める住民多く

 JR木更津駅周辺の商店街はシャッターを下ろしたままの店舗が目立ち、人通りも少ない。木更津市の中心部は、衰退する地方都市を象徴するかのような姿をさらしている。これに新型コロナ禍が追い打ちをかける。厳しい現状から抜け出す妙案は見いだせない。
 一般会計予算が約四百七十億円の市にとって、陸上自衛隊駐屯地があることで国から支払われる年約三億円の交付金は貴重だ。市営陸上競技場や市消防本部庁舎も、国の補助で建設された。市幹部は垂直離着陸輸送機「オスプレイ」の暫定配備で「今後、増額されるのではないか」と期待する。
 地元漁協の男性組合員は長年、駐屯地の騒音に悩まされてきたという。それでも、配備については「滑走路にタイヤがついたら反対は無理。先のことを協議し、地元が良くなるようにしないといけない」と現実を受け止める。市中では、国との蜜月を求める声が主流となっている。
 オスプレイはプロペラの角度を変えることで、ヘリコプターのような垂直離着陸と固定翼機のような高速飛行ができる。一九八〇年代初頭に始まった開発段階から事故が相次ぎ、これまで四十人近くが死亡した。「いわく付き」の機体を陸自に導入する動きは旧民主党、野田佳彦政権末期にさかのぼる。当時防衛相だった森本敏氏は「二〇一二年夏ごろ、将来日本が使えるか、検討する必要があると省内で指示した」と明かす。
 時あたかも米海兵隊が普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)へオスプレイの配備を進めており、反発が強まっていた。尖閣諸島の国有化を巡り中国公船が日本の領海などにたびたび侵入し、日中の緊張が深まる中で、南西諸島防衛の重要性が語られ始めたのもこのころだった。
 森本氏は「南西方面で事態が発生した際、部隊を艦艇で運ぶのはすごく時間がかかる。短い滑走路で、素早く部隊を投入できるという大きなメリットがあると考えた」と振り返る。
 導入構想は第二次安倍政権に引き継がれた。政権発足から一年で決定した中期防衛力整備計画で、米国からの「兵器爆買い」が始まった。ここに、オスプレイ十七機の導入も盛り込まれた。
 十七機の取得費は約千七百四十七億円で、一機当たり約百三億円。防衛装備庁は、これに加えて二十年間の維持管理費を四千三百九十八億円と見込む。
 首都圏では、米空軍も横田基地(東京都福生市など)にオスプレイの配備を進めている。現在、五機だが十機まで増える計画。周辺では「騒音と危険な飛び方」(同基地の撤去を求める西多摩の会、高橋美枝子代表)が住民を悩ませているが、今後、日米で最大二十七機のオスプレイが首都圏の空を飛ぶことになる。これを懸念する声は木更津にもある。
 地元の市民団体「オスプレイ来るな いらない住民の会」の野中晃事務局長(80)は「世界各地で事故を起こしている機体なのに、住民にはどんな訓練をするか情報公開されていない。首都圏の上空を飛び回ることになり、不測の事態が起きかねない」と危惧する。
 ◇
 陸上自衛隊が導入したオスプレイが陸自木更津駐屯地に配備される。当初防衛省がもくろんだ佐賀空港(佐賀県)への配備に向けた地元との調整が難航したことによる五年の暫定措置だが、期限内で佐賀へ移ることができるかは不透明だ。消えない不安の中で宙に浮いた陸自オスプレイが、木更津に降り立つまでと、今後を探る。(この連載は山田雄一郎、荘加卓嗣、山口哲人が担当します)

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