稲葉剛さん「福祉の崩壊始まっている」 インタビュー一問一答

2020年6月8日 07時47分
 新型コロナウイルス感染拡大が景気、雇用に与える影響は二〇〇八年のリーマン・ショック当時を上回るのか。同年十二月末から〇九年一月にかけて東京・日比谷公園内に設けられた「年越し派遣村」など、生活困窮者支援に長年取り組んできた一般社団法人「つくろい東京ファンド」の稲葉剛代表理事に、現状や見通しを聞いた。 (編集委員・上坂修子)
 −新型コロナの感染収束が見通せない。
 「三月ごろから、家賃が払えないという話が出てきた。最初に観光業や飲食業、文化・芸術関係の自営業やフリーランスの収入が激減した。四月に緊急事態宣言が出されてネットカフェにいた人が居場所を失い、『つくろい』には百七十件のメール相談が寄せられた。今は製造業で派遣切りが始まっている。貧困拡大のスピードも規模も、当時をはるかに上回っている」
 −四月の完全失業率は二カ月連続で悪化。三月の生活保護申請件数は前年同月比7・4%増だった。
 「生活保護申請者が増えているのに、自治体は総務省から感染対策で窓口に出る職員を削減しろと言われており、職員が少ないところに多くの人が訪れている。(窓口で申請を拒む)『水際作戦』が平常時より悪化している印象だ。福祉崩壊が始まっている」
 −生活保護を受けやすくするにはどうすべきか。
 「この間、生活保護のオンライン申請の導入を訴えているが、厚生労働省は消極的だ。ドイツは生活保護の受給要件を緩和し、担当閣僚が動画で『困っていたら制度をどんどん使ってください』と広報している。日本もやるべきだ。最後のセーフティーネットである生活保護をフル活用するしか手はない」
 −急ぐべき施策は何だと考えるか。
 「『ハウジング・ファースト(住まい優先)』だ。住まいを失わないための支援強化と、失った人への住宅支援の両方が重要だ」
 −政府は経済的に困窮した人の家賃を補助する「住居確保給付金」の支給要件を一部緩和した。
 「支給される家賃の上限は東京二十三区だと二人世帯で月六万四千円。中所得者層でも家賃を滞納せざるを得ない状況になりつつあるのだから、期間を限定して支給上限を撤廃すべきではないか。民間の賃貸住宅を行政が借り上げる『みなし仮設方式』による住宅の現物給付も必要だ」
 −特別定額給付金は一律十万円支給になった。
 「良かったが、他国に比べて少なすぎる。三カ月くらい連続して出すべきだろう。休業補償の拡充も、貧困拡大のスピードに追いつくことができるか疑問だ」
<いなば・つよし> 1969年、広島市生まれ。東京大卒。在学中から平和運動、外国人労働者支援活動に関わる。2014年までNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」理事長。立教大客員教授(居住福祉論)。

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