<人 まち 話>ドラゴン橋(熱海市)の由来 イメージ変えた守り神

2020年6月8日 07時55分

ドラゴン橋ができた当時を振り返る鈴木俊男さん=熱海市で

 熱海市中心部を流れる糸川。その両岸を河口から川上に向けて約三百メートル延びる遊歩道に、早咲きの「あたみ桜」が並んでいる。川には柳橋、桜橋…といくつかの橋が架かるが、見た目も名前もひときわ目立つのがドラゴン橋だ。その名の通り、竜を題材にした迫力ある欄干が特徴だ。
 「かつて赤線地区だった一帯のイメージを変えたかった」。当時市職員として橋の整備に関わった鈴木俊男さん(71)が、橋整備の目的を教えてくれた。竜には「海と地域の守り神」との意味が込められている。
 熱海市発行の「熱海温泉誌」によると、一九五〇年の熱海大火後、糸川周辺に男性相手の女性が働く店が増え、売春防止法で刑事処分が科される五八年まで一帯は赤線地区だった。
 鈴木さんの記憶では、赤線の痕跡が残っていた昭和末期ごろ、市によって糸川沿いの遊歩道整備が始められた。もともと、川沿いには桜と柳が混在していたが、柳を桜に植え替え、電線を地中化した。遊歩道には、川をさかのぼる魚やタコなどをかたどったオブジェを置いた。
 ドラゴン橋は他の橋とは違い、広場や舞台のようになっており、橋の上でイベントを開くことができる。デザインは当時の市職員たちが話し合い、「話題になるようなものにしよう」と決まった。糸川地区とドラゴンに深い関わりがあるわけではなかったという。
 完成当時、斬新なデザインが地元で話題になった。その後、富士フイルムのテレビコマーシャルのロケ地になり、知名度はさらに上がった。鈴木さんは「アイドルがドラゴンの口に頭を近づけて写真を撮る様子が印象に残っている。今で言う『映える』場所だった」と笑う。
 ここは春、あたみ桜を楽しむ観光客でにぎわう。イベントがあるほか、住民の待ち合わせの場所などにもなり、遊歩道の中心的な場所として親しまれている。鈴木さんは「一帯の雰囲気が変わり、当初の目的を達成できた。多くの人に愛してもらい、ありがたい」と目を細めた。
 文・山中正義/写真・立浪基博

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