コロナ 氷河期世代直撃 就労支援、行き詰まり

2020年6月8日 08時07分

2月に実施された「パソナグループ」の氷河期世代向け採用説明会。今、採用活動はストップしている=東京都内で

 バブル崩壊後の就職難に見舞われた「就職氷河期世代」を対象とする政府の就労支援。四月から本格化する予定だったが、新型コロナウイルスの影響で行き詰まっている。業績の悪化を受け、民間企業で採用を控える動きが目立つほか、感染を防ごうとハローワークの支援業務が制限されたことも大きい。「もう後がない」と当事者の焦りは増すばかりだ。 (添田隆典)
 氷河期世代は、主に一九九三〜二〇〇四年に高校や大学を卒業した人たち。長引く不況で満足いく就職ができないまま、多くが三十代半ば〜四十代後半を迎えている。政府は、やむなく非正規で働く人など支援対象は約百万人いると推計。昨年六月、今後三年間で三十万人の正規雇用を生み出すと打ち出した。
 しかし、新型コロナが問題になったこの間、当事者の状況は悪化している。
 話を聞いたのは、二月に一度取材した群馬県高崎市の女性(39)だ。女性は一九九九年に高校を卒業後、派遣やパートの職を転々とした。直近は派遣社員として家電量販店で働いていたが、四月中旬に突如、契約を切られた。コロナ禍で客足が減ったのが理由という。五月末、ようやく新たな派遣先が決まったが、給与は月収換算で七万円も少ない約十六万円。求人が大幅に減っていて「ぜいたくは言えなかった」と明かす。
 最初に取材した時、女性は、人材派遣大手「パソナグループ」(東京)が実施した氷河期世代向けの採用説明会に参加。選考には落ちたが「他でも採用が増えれば、きっと」と期待していた。しかし、今は「コロナでまた逆戻り」と嘆く。政府に賛同し、来年三月までに三百人を正規採用するとしていたパソナも感染拡大を受け、四月に採用活動を中断、二日時点で再開は未定だ。内定者はまだ二十人弱で「今後、採用人数の縮小もあり得る」(同社広報部)という。
 全国の主要なハローワークは昨夏から、氷河期世代向けの窓口を順次開設。一人一人に専任の相談員を付け、職業紹介から就職まで切れ目なく支援するとしていた。しかし、「三密」を避けることが強く求められるようになった四〜五月の間、どこも職員を交代勤務にするなど業務を縮小。専任を置くことは難しかった。
 ハローワーク新宿(東京)は四月一日に専用窓口を設ける予定だったが、今月一日まで延期せざるを得なかった。しかも、求職者には、来所を控え、相談はなるべく電話でするよう呼び掛けている。担当者は「職務経歴書の添削や面接時の助言などは対面でないと難しい」と悩む。
 影響は求人にも表れている。厚生労働省によると、ハローワークに登録された雇用期間に定めのない氷河期世代限定の求人のうち、四月の新規求人は二百五十八件。外出自粛で客が減ったタクシーやバスなどの運輸業を中心に、三月の五百五十八件から二分の一以下に落ち込んだ。
 ハローワーク名古屋中(名古屋市)は、三月に開催予定だった氷河期世代向けの就職フェアの実施を検討している。ただ、もともと参加を予定していた十四社と同程度の企業が集まるかは未知数だ。「求人全体が落ち込む中、氷河期に絞った採用にどれだけ賛同してもらえるか」と漏らす。
 支援を所管する内閣府は「三年間で正規雇用三十万人の目標に変わりはない」と強調する。しかし、氷河期世代の雇用問題に詳しい労働政策研究・研修機構(東京)の堀有喜衣主任研究員は「コロナの出口が見えない中では厳しい」とみる。もし支援が頓挫すれば、当事者の疎外感は再び強まる。「本人たちが希望を持ち続けられるよう、大事なのは細くても長い支援」と説明。「生活費をある程度保障しながら受けられる職業訓練を充実させるなど、コロナ後の雇用の回復を見据えた支援への転換も必要だ」と指摘する。

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