重い心臓病の中国人実習生に命の帰国便 コロナ禍で武漢へ、移植に望み

2020年6月9日 14時08分

病院スタッフとリハビリをする中国人女性(左から2人目)。中国・武漢での心臓移植手術を控え、体外式の人工心臓につながれている=1日、愛知県豊明市の藤田医科大病院で(内山田正夫撮影)

 まれな心臓病のため藤田医科大病院(愛知県豊明市)で人工心臓を付けて長期入院している中国人女性(24)が、心臓外科の先進医療で有名な中国・武漢の病院で移植手術を受けるため、近く出国できることになった。新型コロナウイルス感染拡大で渡航制限が続く中、懸命の治療と闘病に加え、中国総領事館も奔走し、望みをつないだ。 (安藤孝憲)
 女性は愛知県内の電子機器メーカーの技能実習生として二年前に来日。昨年五月、にきび治療薬として処方された抗生剤で全身のアレルギー反応が起き、入院した。影響が心臓にも及んだと考えられ、血液の循環機能が失われる「巨細胞性心筋炎」と診断された。
 一時は生死の境をさまよう状態だったが、同病院心臓血管外科の高味良行教授(55)らのチームが同九月、心臓に管をつなぎ、体の外の装置で血液を循環させる人工心臓の装着手術に成功。今はリハビリで院内を歩けるほどに回復した。
 根治には心臓移植しか方法がないという。だが国内ではドナー(提供者)が少ない上、外国人への移植はほとんど例がないとされている。
 中国にいる女性の父親らが手を尽くし、今年初めに武漢の病院で移植が実現するはずだった。だが武漢で新型コロナ感染者が急増し、女性が搭乗を予定した中部国際空港からの定期便も直前で運休に。高味教授は「目前で希望が消えた。看病で来日中の母親の絶望感は特に深く、見ていられなかった」と振り返る。
 それでも女性もチームも前向きにリハビリを続けた。病院では同時期に新型コロナ陽性患者を受け入れていたが、万全の対策で院内感染を一人も出さなかった。中国では流行の第一波が収束に向かい、武漢の病院も四月に女性の受け入れを再表明。五月末に渡航計画が具体化した。
 在名古屋中国総領事館も後押し。働き掛けを受けた中国南方航空は、実費のみでチャーター便の運航を決断し、中国から女性を派遣した企業が渡航費用を立て替える。李穎(りえい)領事は「新型コロナ対応で日本の病院は多くの中国人を治療してくれた。その尽力に報いるためにも、私たちも力を尽くした」と話した。
 女性は体調さえ万全なら十二日に帰国がかなう。中部空港へは、あいち小児保健医療総合センター(同県大府市)にある高規格救急車を借り、人工心臓を付けたまま移動。藤田医科大病院の高味教授、循環器内科の星野直樹助教(39)らが同乗し、チャーター機に乗ってくる武漢の医師に引き継ぐ計画だ。
 高味教授は「多くの人の協力でつないだ命。無事に移植が成功してほしい」と願う。高額な手術費用を援助するため病院職員有志による募金も始めた。女性は職員を介した本紙取材に「帰国できることになり、うれしい。退院したらまた日本を旅行したい」と答えた。

関連キーワード

PR情報

新型コロナの新着

記事一覧