大学「授業料半分返して」 オンライン授業のみが今も6割

2020年6月9日 14時13分

名古屋商科大のオンライン授業の様子=名古屋市(同大提供)

 緊急事態宣言が解除され、小中高校の授業が再開されるが、大学ではオンライン授業だけ実施のところが6割を占め、対面授業はなかなか再開されない。学習面での障害、経済的負担も大きい中、「通常の大学生活ができないなら、授業料減額を」という声も高まっている。 (片山夏子)
 中央大文学部四年の織野嶺(れい)さん(22)は八月までの前期はオンライン授業が続く。「途中で通信障害が起きるし、オンライン授業は一方通行。質問はできるけど、他の人の意見を聞けないし議論が深まらない。限界がある」。卒論や大学院受験の勉強をしたいが図書館が閉まっていて専門書が使えず、勉強ができる環境にない。毎日一人で家にこもる生活が続き、「人と会わないと気持ちがふさぐ」。
 織野さんの後輩は新型コロナ感染拡大の影響でバイトを解雇され、生活できなくなって実家に戻った。「経済的に厳しい学生はさらに困窮して、退学を考える学生もいる。研究ができない上、サークルなど文化活動もキャンパスライフもない。オンライン授業だけでは大学生活とは別もの。授業料を半額返してほしい」
 慶応大法学部四年の田中駿介さん(22)も七月末までオンラインでの授業やゼミが続く。「パソコンやネット環境がない学生もいる。緊急事態宣言が解除されてようやく再開した喫茶店も、オンライン授業を店内で受けるのは禁止する店が多い」。同大は通信環境の整備が困難な学生に一万五千円の補助を支給するが「大学の授業料が一万円上がり、実質五千円の補助。これで機器購入はできるのか。そもそも授業料が高すぎる」。田中さんは、オンライン授業の質に限界を感じる。「感染を懸念する学生もいるから、オンラインと登校を学生が選べるようにしてほしい」
 文部科学省によると六月一日現在、国公立大、私立大、高等専門学校の計千六十九校のうち授業中断中の三校以外で、オンラインなど遠隔授業だけが六割、面接と遠隔の併用が三割、面接授業が一割弱。少なくとも八十九校は七月末までは遠隔を継続する予定だ。
 大学で通常授業が再開しないのはなぜか。「首都圏以外の学生と留学生合わせて二万人弱の学生は、緊急事態宣言が解除後もすぐに登校できない」(早稲田大)、「学生や職員らの健康と安全を守り、感染拡大防止を最優先に考えての判断」(慶応大)という。名城大のように「一度も登校していない一年生は学習意欲に配慮し、科目を厳選し対面授業をしている」という大学もあるが少数派だ。
 文科省高等教育企画課の三木直樹氏は「小中高と違い、大学ではもともと遠隔授業が認められている。やり方は大学の判断。不安を抱いている学生への十分な説明や相談窓口設置をお願いした」と話す。
 ただ、多くの学生は勉強以外も含めたキャンパスライフを希望して入学している。それができないのに授業料を満額徴収するのは納得しがたいが、三木氏は「一年を通じた学習活動への対価。一時期通えないからといって減免するというものではない」と説明する。
 新潟大の世取山洋介准教授(教育政策論)は「新入生の中退率の増加は当初より懸念されている」と話す。同大はオンライン授業だが、一部の学科では一年生の授業は少人数制にし、授業中のやりとりができるように工夫。またオリエンテーションで学生同士が連絡を取り合えるようにした。
 「中退者を出さないためには、横の関係のつながりが重要。大学生活では学業だけでなく、一生続く人間関係やキャンパスライフが大事。その意味でも、できる授業から再開すべきだ。本来の大学生活でないのだから、授業料は半額返して、国が補償すべきだ」

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