国策不捜査 「森友事件」の全貌 籠池(かごいけ)泰典+赤澤竜也著

2020年4月5日 02時00分

◆公文書改ざん問わぬ怒り

[評]内田誠(ジャーナリスト)

 「幕引き」は、終わったものと思われていた。
 公文書改ざんに関する財務省の「調査報告書」が公表され、改ざんに関与した官僚たちに形ばかりの処分がなされたことで、「森友学園事件」の真相解明を求める声はかき消されつつあった。しかし今年は、二つの出来事によって「事件」に再び光が当てられている。
 一つは、自殺した財務省近畿財務局の職員、赤木俊夫さんの遺書と手記が公表され、遺族が国と佐川宣寿(のぶひさ)理財局長(当時)に損害賠償を求めて裁判を起こしたこと。赤木さんは、意に沿わない公文書改ざんを命じられ、「病気休暇」に追い込まれた末、自ら命を絶っていた。
 もう一つが本書の出版だ。副題に「『森友事件』の全貌」と銘打った本書は、詐欺罪などで実刑判決を受けて控訴中の森友学園前理事長・籠池泰典氏と、作家・赤澤竜也氏との共著で、「事件」の発端から籠池夫妻の逮捕と大阪地検特捜部による取り調べの詳細、その後の顛末(てんまつ)に至るまで逐一記録されている。当事者である籠池氏の主観だけでなく赤澤氏の認識も補足されているので、本書の全体が、赤澤氏の取材記録という性格も帯びている。
 とは言え、タイトルの「国策不捜査」という造語には、籠池氏の怒りが込められているようだ。自分は国策によって補助金絡みの詐欺罪に問われ、三百日近くも逮捕・勾留されて今も裁判中なのに、公文書改ざんに対しては国策によって捜査が事実上回避され、逮捕も家宅捜索も行われず、財務官僚は全員不起訴となっていることへの怒りだ。
 官僚たちはなぜ、籠池氏の小学校開設に特別な便宜を与え、そのことが露見するや慌てて公文書を改ざんし、政治家や首相の妻の関与として追及されそうな部分を消し去ろうとしたのか。今年の二つの出来事がきっかけとなって、佐川氏が法廷で事実を語り、安倍昭恵氏ら、この問題に関わった人々が国会で真相を明らかにすれば、その時、安倍晋三氏が首相職と国会議員を辞すべきか否かがハッキリすることだろう。
(文芸春秋・1870円)
籠池 前森友学園理事長。補助金詐欺で一審有罪。控訴中。
赤澤 文筆業。著書『内川家。』。

◆もう1冊 

森功著『悪だくみ』(文春文庫)。森友事件に並ぶ加計学園問題の全貌。

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