訪問介護、コロナでひっ迫 負担増す予防策 人材不足にも拍車

2020年6月10日 08時40分

女性は利用者宅で手袋を二重にする=関東地方で(本人提供)

 緊急事態宣言は解除されたが、訪問介護の現場では今も、ヘルパーたちが感染防止に細心の注意を払いながら、在宅の高齢者や障害者の生活を支える。医療職と比べ、感染防御の知識や技術が少ない中、介助は至近距離にならざるを得ず、ほぼ一人で対処しなければいけない負担感も大きい。慢性的な人材不足に拍車がかかっており、介護関係者は支援の充実を訴える。 (佐橋大)
 「万が一にも、利用者を感染させられない。正直、怖いけど、私が行かないと、利用者さんの生活が成り立たない」
 関東地方で、重度の知的障害者の訪問介護に携わる五十代のヘルパー女性は週一回、夜から翌朝まで約十二時間、利用者の成人女性宅で排せつや食事、着替えなどを介助。感染への不安を抱きながら、使命感で通う。
 かばんはウイルスが付着している可能性を考え、生活スペースには持ち込まない。利用者の前ではマスクは外さず、ドアノブ、テーブルの消毒と手洗いは徹底する。
 一方、利用者は障害が重く、感染対策を理解できない。マスクはせず、女性の前でくしゃみをしたり、吐いたりする。女性は身を守るため二重の手袋、フェースシールド代わりのサンバイザー、レインコートも着用。自前のものも少なくない。
 今も仕事以外の外出は必要最低限にとどめ極力避けている。密着せざるを得ない仕事内容や、感染対策のプレッシャーで「精神的に大変疲れる」という。
 名古屋市のある事業所ではヘルパーにマスク着用と手指用の消毒液の携帯を義務づけ、会話を少なめにするなどしている。サービス提供責任者の男性によると、障害者の外出にヘルパーが付き添う移動支援もしているが、最近は公共交通機関などの混雑が戻りつつあり、「感染が心配」。障害によっては、マスクを着け続けることが難しい利用者もおり、「周囲とのトラブルも心配」と懸念する。
 埼玉県新座市で、複数の介護事業を手掛けるNPO法人「暮らしネット・えん」の代表理事、小島美里さん(68)によると、介護サービスの中でも訪問介護は感染対策で、職員の負担感が特に大きい。一人で個人宅に出向き、対応しなければならないからだ。
 低い介護報酬のため介護職の低賃金は続いており、通常でもヘルパーは慢性的に不足。六十代、七十代のヘルパーも多い。「えん」ではいないが、業界では、感染への不安から退職した人や希望者は少なくないという。
 小島さんは「感染拡大で訪問介護は危機的」と主張。四月、訪問系サービス事業所への感染対策の周知徹底と、ヘルパーの増員対策の実施を求める要望書を、東京都のNPO三法人などとともに国に提出した。

◆厚労省、感染対策を動画に

 現場の声を受け、厚生労働省は、訪問介護職向けに感染対策をまとめた動画「訪問介護職員のためのそうだったのか!感染対策!」を作成。五月上旬から動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開している。
 ウイルスを「持ち込まない」「(利用者との間で)やりとりしない」「持ち出さない」の三本で構成。いずれも八〜十分程度で、食事介助や口腔(こうくう)ケア、排せつなど介護の場面ごとに注意点や具体的なノウハウを解説している=表参照。
 例えば、食事介助の際には利用者のせきや、むせこみで唾液が飛ぶ可能性があるため、花粉症対応の眼鏡やゴーグル、フェースシールドなどを着用して目を守ることを推奨。テーブル上のウイルスを取り除くために、アルコール入りウエットティッシュや塩素系漂白剤を希釈したもので消毒することなどを紹介する。
 また、本年度第二次補正予算案に介護職一人当たり五万〜二十万円の慰労金を計上している。

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