東京新聞 金沢文庫専売所

2020年2月26日 12時00分

東京新聞 金沢文庫専売所


【住所】神奈川県横浜市金沢区泥亀1-7-21 1F 【電話】045-342-8470

所長・市川 博之さん


誰よりも腰が低い振る舞いと穏やかな口ぶりが魅力の市川さん。昨今の業界を憂い、行動しなければ未来は切り開けないと、地域に寄り添う新事業を模索している。

15年ぶりに戻った故郷・金沢文庫で
この仕事に就いたそうね。

 以前は群馬で全く違う業態のお店を持っていたのですが、一区切りついて次は何をしようかと考えていたとき、姉の旦那さんから地元で新聞の仕事をしてみないかと誘われたのが発端でした。当時は娘が不登校で、環境を変えたら気分も変わるのではないかという思いもあり、12年前に戻ることを決意。このお店自体は今年5月で6年目を迎えます。
 新聞業界は初めてでしたが、若いころからゴルファーを目指してみたり、市場で水産業を営んでみたりと、経験のない業種にチャレンジするのは好きだったので、ためらいは特になかったと思います。実際、配達については土地勘があったのでそれほど苦労はしませんでしたね。それよりも、群馬にいたころはずっと冷暖房がしっかりと効いた室内で仕事をしていたので、毎日外に出る生活が新鮮でした。暑いときは暑く、寒いときは寒く、四季の移り変わりを肌で感じられるようになったことが嬉しくて……。ただ、こちらに戻ってからも、肝心の娘の調子はなかなか良くならず、親としては気を揉む時間が続きました。

自分の言葉が相手にどう響くか考えながら、丁寧に言葉を選ぶ市川さん。怒りっぽいとはとても信じられない

 そんな折、お店の研修でお世話になっていた方から、良ければチラシの折り込み研修を受けて働いてみたらどうかとお誘いをいただいて、試しに行かせてみたんです。その後、だんだんと集金も配達もできるようになり、今ではうちの店にいなくてはならない大事な社員に育ってくれました。オートバイの免許までとってきて、てきぱきと確実に仕事をこなしてくれる娘に、もう頭が上がらないですね。

お店は看板猫のチャビちゃんを中心に
皆さん和気あいあいとしているのが印象的。
スタッフとの関係で気を付けていることは?

皆で子猫を見守り、楽しげに言葉を交わす従業員の皆さん。いざ作業となれば手際良く、集合写真もスムーズに撮影完了


 うちの従業員は年配の方が多いこともあって、ご本人はもちろんその家族の方が心配されることがないように気を使っています。皆、家庭があるので、どんな仕事をしていただいているかをご家族とも共有したり、あまり遅くならないように声をかけたり、そういったフォローをするのも所長の仕事だと考えています。
 それから、これは業種を問わないことですが、「ものごとは全て自責で捉える」ようにしています。実は、わたしは本当は怒りっぽいんです。怒りのメーターが100まであるとしたら、一瞬で80までは上がってしまうし、そのままだとあっという間にキレてしまうようなタイプ。そんな私を見て、昔の上司がかけてくれた言葉が「ものごとは全て自責で捉える」でした。どんなことも、1%くらいは自分にも悪いところがあるはずなのだから、怒りをぶちまける前に一呼吸おいてみろということです。アドバイスのお陰で、今では思ったことをすぐに口にしなくなりましたし、怒鳴ることもほとんどなくなりました。

あっという間にお店のアイドルになったチャビちゃん。お客様や出入りする業者の方にも可愛がられているそう

 それでストレスを感じないかといったら……勿論、とても感じますよ(笑)。でもそれも、最近ではチャビを撫でているとすっかり癒されてしまいます。配達に出かけても、ひとりで寂しがっていないか心配で急いで帰るようになりましたし、私だけでなく皆の笑顔が本当に増えました。

金沢文庫という地に改めて根を下ろした今これからについて考えていることはある?


 戻ってみてしみじみ感じたのは、下町の風情が薄れてきたなということでした。昔からの方と新たに入ってきた若い方とが入り混じって、私が子供のころと比べると随分雰囲気が変わったと思います。それにつれて、少しずつ住民同士の関わりも減ってきているように感じることもあります。寂しい気もしますが、これも時代ですね。
 同じく時代の流れなのでしょうが、新聞を読まれる方も減ってきました。ある程度仕方ないこととはいえ、手をこまねいているだけではこの先廃れる一方でしょう。どうしたらいいのか、正解は分かりませんが、一つの方法として地域の方々とのつながりを深めていけるようなサービスを試してみようと考えています。具体的に言うと、高齢の方や日中忙しい方にかわって買い物代行するサービスを、今年のどこかで始めたいですね。既にその準備も進めています。従業員の負担も考えると無料というわけにはいきませんが、新聞を購読されていない方にも同様のサービスを提供するつもりです。まずはそうやって住民の方々と接点を持ち、信頼を得ていく中で、もしよければ……と営業をさせていただければいいのかなと。
 うまくいくかどうかは動かしてみないと何とも言えませんから、今年はその試運転と結果の分析をしていきたいと思っています。

■八景島(はっけいじま)

横浜市による「海の公園計画」に基づいて、市民の厚生施設として整備された人工島。その名は特に横浜・八景島シーパラダイスとして知られていますが、島にはほかにもヨットハーバーや桟橋、緑地などが整備され、市民の憩いの場となっています。

■芝漁港・金沢漁港(しばぎょこう・かなざわぎょこう)

いずれも金沢地区にある漁港で、のりの養殖が盛んであるほか、アナゴなどの鮮魚を市場に出荷しています。直売やイベントにも力を入れており、それぞれの漁港ならではの海の幸を堪能できるとあって、地元の方のみならず多くの観光客の舌を楽しませています(※写真は金沢漁港)。

■野島公園(のじまこうえん)

バーベキュー場やキャンプ場などを備えた、平潟湾入口に浮かぶ小さな島につくられた野島公園。野島山山頂の展望台からは房総半島や富士山なども見ることができます。園内に保存されている旧伊藤博文金沢別邸は市の有形文化財に指定されています。

PR情報