猫君(ねこぎみ) 畠中恵(はたけなか・めぐみ)著

2020年2月23日 02時00分

◆新米妖怪が団結、難題に挑む

[評]関口苑生(えんせい)(文芸評論家)

 体の弱い若旦那と妖怪が協力して、不可解な事件に立ち向かう人気時代ファンタジー「しゃばけ」シリーズでお馴染(なじ)みの作家、畠中恵が新たなキャラクターを生み出した。
 それが本書『猫君』の主役となる「猫又」だ。
 日の本に生まれた猫は、二十年生きると尻尾の先が二叉(ふたまた)にわかれ、妖(あやかし)になるという。人語を解し、人に化け、飼い主に祟(たた)ると言われる妖怪である。とはいえ、猫又としては新米の一年生。人に化ける術、文字を上手に書く綴(つづ)り方、しぶとく生き延びていくためのテクニックなどはまだまだ覚束(おぼつか)ない。
 そんな彼らのための学び舎(や)――猫宿が、なんとまあ江戸城の中にあるのだった。そこで新米猫又たちは、各授業の師匠から日々厳しい指導を受け、一人前の猫又になるべく励んでいく。と、まるで冗談のような物語が展開されていくのである。
 江戸には猫又が住む里(陣地)が六つあって、それぞれにある特徴を持っている。またそのうちの四つが男猫又の陣、二つが女猫又の陣と決まっていた。各陣の関係はなかなかに微妙で、表面上はともかく、隙あらば自分の陣地を拡大させようと狙っているのが実情だ。当然、新米といえども他陣の連中には負けられないという対抗意識がある。そういう中にあって、今年は二十匹の新米猫又たちが一緒に学ぶことになったのだ。
 洋の東西を問わず、ファンタジーというと、魔法や妖の術の派手な描写につい目を奪われがちだが、本当の面白さと魅力はそこにはなく、仲間がお互いを大切に思い、信じ合い、協力しあって難題に挑んでいくところにある。だからこそ共感も生まれる。
 本作も、最初は張り合っていた新米猫又たちが、鮮やかな茶虎で、左右の目の色が違う金目銀目の雄猫・みかんを中心に、次第に一致団結していく姿が描かれるのだが、これがもう抜群に面白い。面白いだけではなく、思いっきり笑えるし、泣けるし、感動する。何と言っても、猫たちの愛らしさ、気ままさ、もふもふ具合が最高です。
(集英社・1595円)
漫画家アシスタントなどを経て2001年、『しゃばけ』で小説家デビュー。

◆もう1冊 

畠中恵著『しゃばけ』シリーズ16巻目『とるとだす』(新潮文庫)

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