withコロナ 新しいスポーツ様式

2020年6月11日 08時04分

口元をバフで覆って走る宮野真理さん

 政府の緊急事態宣言は解除されたが、新型コロナウイルスへの警戒は続く。そんな中、スポーツ時の口元からの飛沫(ひまつ)を抑える工夫や新グッズが次々に生まれている。「安心して、体を動かしたい」という思いが原動力のようだ。
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 「普通のマスクに比べれば断然、楽ですよ」
 都立小金井公園(小金井市)でジョギングする会社員宮野真理さん(53)の口は「Buff(バフ)」という筒型の布で覆われている。スペインのメーカーがかねて販売していた多用途製品で、宮野さんは首や頭に着けて寒さや日焼けを防ぐため、昨年購入した。
 4月中旬、マラソン愛好家としても知られる京都大iPS細胞研究所長の山中伸弥教授がジョギングエチケットとして、マスク代わりにバフなどを使うアイデアをネット上で紹介。マスクと違い、強く息を吸っても顔に張り付かない良さがあるという。マスクによる顔のあせもに悩まされた宮野さんも試し、「通気性がよく、汗の乾きがいい」と愛用するようになった。
 バフを輸入・販売する「ゼット」(大阪市)によると、山中教授の推薦後、売り上げは前年同月比で5倍に跳ね上がった。専門誌「月刊ランナーズ」の黒崎悠編集長(35)によれば、口元を覆う商品の需要は軒並み伸びている。「今の情勢では口元を覆わないと、ランニングが社会に受け入れられない。暑くならず、息のしやすい商品が求められている」と黒崎さん。

自ら開発した「プールマスクマン」を装着する西川隼矢さん(本人提供)

 水泳インストラクター向けには新型マスクが開発された。その名も「プールマスクマン」。戦隊シリーズばりのポスターも制作し、プールに通う子どもに親しまれるよう工夫した。
 表情が見えるように透明で、生徒に向けて近距離で話す際の飛沫をカット。顔全体を覆うフェースガードと違い、着けたまま泳ぎやすく、実演しやすい。ただ、泳ぐには慣れが必要。一般には勧めていない。

子どもたちに親しんでもらおうと制作した「プールマスクマン」のポスター

 プールアイテムなどを手掛ける「Rockin’Pool」(台東区)の西川隼矢社長(38)が開発した。
 四月下旬に発売、すでに約千百の施設から計約二万二千枚の引き合いがあった。「水泳は手取り足取り教えることがあり、距離が近い。子どもをプールに通わせる保護者にも安心してもらいたい」と話す。

剣道の面に「剣道マスクAir」を使って不織布マスクを付けた状態(福田武道具提供)

 「面!」「胴!」などと打ち込む際に声を出す剣道でも、飛沫対策が進む。福田武道具(埼玉県朝霞市)は、面の下部にはめ込む器具「剣道マスクAir(エア)」を発売した。マスクの形をした枠のようなデザインで、専用の布カバーや市販のマスクなどを付け、飛沫を吸収させる。現在、特許出願中。
 福田一成社長(70)は「つばぜり合いになると、相手との距離は二十〜三十センチになるから、こういった器具は必要。もともと剣道は防具を着けて暑いから、通気性も重視した」と話す。

布カバーや不織布マスクを付けて剣道防具の面に装着する「剣道マスクAir」

 全日本剣道連盟は今月、対人けいこの再開に向け、手ぬぐいなどで口元を覆った上で、面にもシールドを付けることを勧めるガイドラインをつくった。担当者は「現時点での安全策。今後も新しい知見が出たら取り入れたい」と慎重だ。こうした事情を踏まえながら、福田さんは「剣道に打ち込める環境づくりに貢献したい」と願っている。
 文・梅野光春/写真・沢田将人
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