日本プラモデル 世界との激闘史 西花池湖南(にしはないけこなん)著

2020年1月26日 02時00分

◆企画力が育てた市場の60年

[評]小林昇(フリーライター)

 一九五八年に始まったとされる国産プラモデルの歴史は、二〇一八年還暦を迎えた。その間、零戦、大和に始まり、パンサー戦車、鉄腕アトム、ウルトラ怪獣、サンダーバード、スーパーカー、ウオーターラインシリーズ、そしてガンダム、ミニ四駆とさまざまなヒット商品が生み出されてきた。評者もその沼にどっぷりと漬かったひとりだ。そして現在、日本は世界最大のプラモデル生産国であり、有数の市場となっている。
 この本はその日本のプラモデルの六十年にわたる歴史を、個々のヒット商品を紹介しつつ、いかに欧米の輸入製品を駆逐し、現在の立ち位置に至ったのかを明らかにしようとした意欲作だ。
 戦前、イギリスで生まれたプラモデルは、戦後アメリカで爆発的にヒットし、フランス、イタリア、ドイツなど西側諸国でこぞって生産され、大きな市場となった。しかし昭和の後半から平成にかけて、日本のプラモデルはその品質や企画性において海外の商品を凌駕(りょうが)し、空前の市場を形成した。
 それにはアニメという日本ならではのコンテンツが大きな影響を与えたと著者は考える。
 ところが二十世紀の終わりごろから市場に大きな変化が現れた。中国や旧社会主義圏の東欧、ロシアなどのメーカーの参入だ。これらの国々ではプラモデルが新しい趣味として受け入れられるとともに、それまで木型師や金型設計者の職人技が必要とされたプラモデルの開発に、コンピューターによる設計、製造のシステムを導入することで新興メーカーの誕生を促した。特に中国の台頭はめざましく、タミヤやバンダイなど日本のメーカーに追いつき追い越せとばかりに、商品開発をしているという。
 顧客層の高齢化や、小売店の減少などの問題を抱えながら、プラモデルの世界地図はどのように描き替えられていくのか。ひとつにはゲームやアニメとのコラボに可能性があるとこの本は教えてくれる。惜しむらくはもう少しキットの写真を見たかった。
(河出書房新社・1760円)
1961年生まれ。ライター。趣味・エンターテインメントを中心に活動。

◆もう1冊

小林昇著『日本プラモデル六〇年史』(文春新書)

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