夏目漱石に、処世訓を若者に説いた『愚見数則』がある。若者に…

2020年6月12日 07時56分

 夏目漱石に、処世訓を若者に説いた『愚見数則』がある。若者に限らず、時に応じ、心に響く一喝のような言葉が多い▼たとえば、<小智を用(もちい)る勿(なか)れ、権謀を逞(たくまし)うする勿(なか)れ、二点の間の最捷径(さいしょうけい)は直線と知れ>。目的に向かっては、小ざかしいたくらみなどを捨てて、まっすぐに最も近い道を進めという▼世の中がコロナ禍で傷ついたこの時、近い道をまっすぐに通り、できるかぎり早く、必要とする人に資金が届いてほしい事業であろう。打撃を受けている中小企業や個人事業主への持続化給付金だ。近道どころか、あやしげな道を通っていないか。そんな疑念が膨らんでいる▼経済産業省が、まず電通と関係がある一般社団法人に七百六十九億円の事業を委託すると、この一般社団法人は、二十億円少ない額で電通に再委託し、電通はさらに子会社に外注し…▼道に乗ったのはいいけれど、どうしてかすぐに乗り換えを強いられ、トンネルも経由させられ−そんな絵を想像する。切実に待つ人がいるのに、なぜこの道か、乗り換えのたびに費用がかかっていないか、「中抜き」されていないか。疑念への政府側の言葉は説得力があるとはいい難い。別の近道があったはずであるという声も上がっている▼困っている人の将来を左右する税金の重要な使い道である。「小智」や「権謀」に影響されていないか。納得できる説明がほしい。

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