5人抜き 一枚看板へ期待 桂宮治、来年2月真打へ

2020年6月12日 08時51分


 落語芸術協会(芸協)所属の二つ目、桂宮治(43)が来年二月、五人の先輩を追い越して単独で真打ちに昇進する。芸協の落語家としては一九九二年以来の「抜てき昇進」と思いきや、三カ月後の五月には宮治に先を越されたうちの四人が“定例昇進”することも発表された。香盤(入門)順の昇進が慣例化していた芸協では、宮治以前にも“単独昇進”が目につく。芸協の真打ち戦略とは−。 (ライター・神野栄子)
 三月に正式決定の知らせを受けた宮治は「『(抜てき昇進)させなければよかった』と言われないように一生懸命、落語を頑張るだけ。お客さんに楽しんでもらうために、絶対に手を抜かない」と決意を語る。
 三十歳まで化粧品などのトップセールスマンだった宮治は二〇〇八年、一念発起して桂伸治に弟子入り。明るく豪快な性格が奏功し、爆笑を取れるパワフルな芸風を築いた。二つ目時代の一二年秋、若手の登竜門であるNHK新人演芸大賞(落語部門)で大賞に輝き、翌年には芸協二つ目たちのユニット「成金(なりきん)」のメンバーとなった。「仲間と本気で芸で殴り合った青春時代」と振り返るように大いに飛躍した。持ちネタは百席を超え、滑稽噺(ばなし)から最近は人情噺、怪談噺にも取り組んでいる。
 そんな宮治の抜てきに、芸協関係者は「遅すぎるくらいだ」と口をそろえる。芸協の春風亭昇太会長も「宮治君は実力も人気もあり、昨年ごろから『真打ちに』という話があった。芸協(所属の噺家)の刺激になってほしい」と明かす。

桂宮治の高座=4月、東京都内で

 しかし、芸協は六月四日、香盤(入門)順で昇進を発表。宮治に先を越された四人が三カ月遅れで真打ちになるが、これには芸協の思惑が感じられる。昨秋、抜てきではなく順繰りとはいえ、「成金」出身で既にスターとなっていた柳亭小痴楽=今年二月には講談の神田伯山を単独昇進させて話題を集めた。芸協関係者は「宮治も“一枚看板”で披露興行を打てる逸材で、小痴楽や伯山のように目立たせたい」と期待を込めて説明する。
 今回の抜てきの意義について、落語会などを企画する中村真規(まさき)演芸プロデューサーは「勢いのある若手を旬の時に引き上げてやらないと腐ってしまう」と強調。演芸評論家の矢野誠一は過去にも抜てきで、波風やドラマがあったことを踏まえ「抜いた方は自信がつき、ますます力がつくが、抜かれた方も悔しさをバネに伸びていく」と指摘する。
 落語協会所属で一二年に二十一人抜きで昇進した春風亭一之輔は「その人が伸びるために早く上のステージに上げないといけないという、評価というか、親心。ゴールではないが一区切りというか達成感はある」と自身の経験を踏まえて語り、宮治には「五年くらい昇進が早くてもよかったんじゃないかな。バイタリティーやサービス精神がすごい。二つ目ではなく同じ土俵にいる人だと思っている」と称賛した。

春風亭一之輔

◆4人は来年5月に

 落語芸術協会は来年五月に真打ち昇進する四人を発表した。三遊亭笑遊(しょうゆう)一門の三遊亭小笑(こしょう)、春風亭昇太一門の春風亭昇々(しょうしょう)と春風亭昇吉、笑福亭鶴光一門の笑福亭羽光(うこう)で、同年五月一日から東京・新宿末広亭を皮切りに披露興行を行う。
 また、今年五月に昇進した新真打ちの昔昔亭A太郎、瀧川鯉八、桂伸衛門の披露興行は新型コロナウイルスの影響で延期となっていたが、新宿末広亭の十月中席(十月十一〜二十日)からスタートすることも発表した。

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