暴露され、無視され、精神疾患に… 職場でアウティング被害の20代男性が、豊島区に救済を申し入れ

2020年6月12日 14時49分

東京都豊島区の担当者にアウティング被害の救済申し出をする男性(左)=豊島区で

 
「これから先、自分のように苦しむ人が出ないように」―。職場の上司に同性愛者だと暴露(アウティング)されて精神疾患になった20代男性が思いを語った。男性は12日、勤務する保険代理店がある東京都豊島区に対し、アウティング禁止を定めた区条例に違反するとして、事業者への指導を求めた。表に出る被害は「氷山の一角」と言われる。「セクシュアリティーを暴露されることがどれだけ人を傷つけるか、1人1人に考えてほしい」と話す。(奥野斐)

◆勇気を出して伝えたのに


 男性は13歳ごろから同性が気になるようになり、同性愛者だと自覚した。誰にも打ち明けられなかったが、社会人になり、自分の暮らす自治体で、同性カップルを公的に認める「パートナーシップ制度」が始まったのが転機になった。制度を利用し、パートナーとの関係を認定された。家族にも話し、親しい友人にも伝えることができた。
 昨年5月、就職の際に勇気を出して上司に伝えた。ところが数カ月後、同僚のパート女性から無視されたり、避けられたりしていると感じるように。飲み会で、上司から男性の性的指向を女性に教えていたと告げられた。理由を問いただすと、上司は笑いながら「1人ぐらい、いいでしょ」と言ったという。

◆怖くて出勤できず


 頭が真っ白になり、その場から消えてしまいたいとさえ思った。「あまりにも軽かった。人を信用できなくなった」。不安な気持ちを抑えて出社したが、他の人にも広がっているのではないか、周囲からどう思われているのかと怖くなり、出勤できなくなった。パート女性は退職した。
 男性の勤務する会社代表は、上司が話したことは認めつつも「一部認識の違いがあった」とし、現在交渉していると説明する。

◆氷山の一角、泣き寝入りも


 男性を支援するNPO法人「POSSEポッセ」には、アウティング絡みの相談も増えている。担当の佐藤学さん(33)は「ここ数年で性的少数者の問題が認知され、潜在的な被害が表に出てきた。ただ、差別や偏見を恐れて泣き寝入りするケースはまだまだ多い」と話す。

男性が労災申請のために準備した書類。「不安、焦燥を伴う抑うつ状態」との記載がある(NPO法人POSSE提供、一部加工)

 男性はその後、病院で精神疾患と診断され、現在も投薬治療とカウンセリングを受けている。今後労災申請もする予定だ。「まさか自分が病気になるほど追い込まれると思わなかった。性的指向や性自認などの個人情報は他人が簡単に言っていいものではない。そういう認識が広がってほしい」
                ◇
 NPO法人「POSSE」は6月13、14の両日午後1~5時、性的少数者の労働相談窓口を設ける。電話番号は0120(987)215。
 

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