「#ラグビーを止めるな」高3の進路開拓へ、プレー動画投稿広がる

2020年6月13日 06時59分

PR動画の投稿から夢への挑戦機会を得た中京大の蜂谷元紹=愛知県豊田市で

 「#ラグビーを止めるな2020」。5月中旬から会員制交流サイト(SNS)で始まった、このプロジェクトが反響を呼んでいる。新型コロナウイルスの感染拡大によって大会が中止となり、進学に向けてアピールの機会がなくなった高校3年生の進路を支援しようと、インターネット上でプレー動画を拡散する取り組みだ。仕掛け人は元日本代表の野沢武史さん(41)。「プレーを続けたいと思う選手に、次へのステージへの手助けをしたかった」と話す。
 日本ラグビー協会でリソースコーチを務め、若手選手の発掘に力を入れてきた野沢さん。3月の全国高校選抜大会が中止になると、選手選考をしたい複数の大学のリクルーター(スカウト担当者)から「良い選手を知らないか」と相談される機会が増えたという。
 「プレーの場を失ったまま、やめることになるのは悲しい」。進路を開拓したい高校生と、情報を集めて吟味したい大学側。両者をつなげるためにSNSでの発信に行き着いた。

オンラインで取材に応じる野沢武史さん

 指導者仲間などに協力を呼びかけると、5月13日からツイッターで投稿が始まった。効果はてきめん。自薦他薦問わずに「#ラグビーを止めるな2020」のハッシュタグ(検索目印)を付けたPR動画が続々とアップされ、元日本代表の広瀬俊朗さんらがリツイート(転載)し、数万回再生されたものもある。野沢さんのもとには「あの選手の連絡先を教えてほしい」「進学先が決まりそう」とのうれしい連絡もあった。
 コロナ禍の苦境が生んだアイデア。だが、野沢さんは一過性で終わらないと考えている。これまでに一芸に秀でた有望株を見いだすための強化合宿「ビッグマン&ファストマンキャンプ」などを通じて、地方に逸材が眠っていることを知っている。従来はリクルーターの目が十分に行き届かなかった地方都市の選手が動画を投稿することで、新たな出会いが生まれると期待する。
 高校3年生を対象に始まった取り組みだったが、トップリーグを目指す大学生らが投稿するなど広がりを見せている。さらにはサッカーやハンドボール、バスケットボールなどの他競技でも同様の活動が徐々に浸透している。野沢さんは「自分のことを自分で売り込むことができる時代。情報を届ける試みをしてほしい」と呼び掛ける。 (岩本旭人、中川耕平)

◆大学生も発信 トップリーグからオファー

 SNSが普及し、誰もが発信できる時代になったからこそ生まれた取り組み。中京大4年の蜂谷元紹(もとつぐ)は活路を開いた1人だ。
 「トップレベルでラグビーを続けたいと強く希望しております」。そう願いを添えた1分53秒の映像。相手ディフェンスをなぎ倒し、力強く突破していく一押しプレーをまとめた動画には4万回近くの閲覧があった。
 関東、関西リーグに比べて注目度の低い東海リーグ。コロナ禍による対外試合の中止がきっかけで、自身で動画制作をして売り込もうとしていたときにプロジェクトを知った。投稿翌日にはトップリーグからオファーがあった。「信じられない展開に驚いた。夢がかないそうでうれしい」と白い歯をのぞかせる。

PR動画の作成を通してチームワークの深化を実感する名古屋高の三浦尚哉主将=名古屋市東区の名古屋高で

 同級生とともに活動に参加した名古屋高ラグビー部3年の三浦尚哉主将は、協力して動画を作ったことで「互いのプレーの善しあしを話し合う時間ができた」と副産物に手応えを得ている。
 推奨した同校の二木久善監督は「周りの選手がどう動いているのかなど、時間をかけて分析することでラグビーの質を上げることにつなげられるのではないか」と狙いを明かす。動画の再生回数は7000回に迫る。三浦は「練習や試合ができない中、見てもらうことがモチベーションになる。昨年のW杯で熱くなったラグビー熱を冷ますことなく、冬の花園(全国高校大会)につなげられたらうれしい」と話す。

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